空自パイロットのツートップ――『侵略者(アグレツサー)』著者新刊エッセイ 福田和代

レビュー

7
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侵略者

『侵略者』

著者
福田和代 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334913496
発売日
2020/05/21
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

空自パイロットのツートップ

[レビュアー] 福田和代

 年明けあたりから、知らぬ間に並行世界にまぎれこんでしまったような違和感があります。元の世界に戻りたいのに、戻れない。おそらく、これを読んでくださっている皆さまも今、うんうんと頷いておられるのではないでしょうか。

 さまざまな制約や気苦労はあるものの、ふだんと近い生活を送るにはどうすればいいか、知恵を絞る毎日です。
 さて、新刊『侵略者(アグレツサー)』について。アグレッサーという言葉は、子どものころ新谷かおるの漫画『ファントム無頼』を読んで覚えました。
 そこに登場したのは、米軍のアグレッサー部隊です。空軍機の戦闘訓練で敵役(かたきやく)を演じる部隊であり、パイロットの中でもとびきり技術が高いかわり、性格的に癖のある、やんちゃでイケイケな(笑)教官集団として描かれていました。なかなか物語的なイメージですよね?

 長年、「いつか書きたい」と考えていたので、数年前に「アグレッサー、取材できますよ」と聞いた時の驚きときたら。

 航空自衛隊のアグレッサーこと飛行教導隊は、アクロバティックな展示飛行を行うブルーインパルスと並び、空自パイロットのツートップです。

 漫画と実際は少し違っていて、取材でお目にかかった皆さんは、眼光鋭く、紳士的で頭脳派のパイロット集団でした。トップの座に上り詰めたからこその悩みや迷いがあることも伝わってきて、超優秀だけど、私たちと同じように、家族を大切に思うごくふつうの人たちなんだなあと、あらためて感じました。「好きすぎると書けなくなる」私の筆が災いして、連載終了後も一年以上かけて書き直しをさせていただき、このたびめでたく刊行の運びとなり、今はホッとしています。

 基本的には脱出・生還系の前向きな冒険小説なのですが、珍しい兵器の情報も入れて、風変わりな作品になりました。楽しんでいただければ幸いです。

光文社 小説宝石
2020年6月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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