「弱い心を何度も叱り、金かりに行く。」(石川啄木「悲しき玩具」)−なんとも切なくなる一節だが、啄木は周囲の人に借金をしまくり、しかも返さないことも度々だったという。
啄木だけでなく、昔の文豪は常に借金だらけで、それをネタにした小説や随筆を集めた本書。前書きで文豪が借金をする理由を「金がほしいのではなく、人間関係を壊したくないから」と分析しているが、さてどうだろう。
「あるやつが出せばいいんだから」(川端康成)と借金を踏み倒すのもどうかと思うが、借金への対応に人間性が表れるのがよく分かる。(方丈社・1400円+税)
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2020年5月31日 掲載
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