平林克己・写真、宮西建礼、岡田裕子・文 「京大吉田寮」

レビュー

5
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京大吉田寮

『京大吉田寮』

著者
平林 克己 [写真]/宮西 建礼 [解説]/岡田 裕子 [解説]
出版社
草思社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784794224255
発売日
2019/12/04
価格
2,200円(税込)

書籍情報:openBD

平林克己・写真、宮西建礼、岡田裕子・文 「京大吉田寮」

[レビュアー] 三中信宏(進化生物学者)

 洛東の京都大学吉田キャンパス南端にある吉田寮は1世紀を超える現存する日本最古の学生自治寮だ。このカラー写真集で初めて目にする読者は、まぎれもなく21世紀のいま営まれている日々のリアルな寮生活に、現実離れした異次元の気配を感じ取るだろう。

 お世辞にもきれいとは言いがたい吉田寮では、国籍や性別を問わず年齢による分けへだてもなく、多くの寮生たちがともに学びそして巣立っていく。評者がかつて2年間暮らした東大駒場寮にも確かにこういう寮生活特有の猥雑(わいざつ)さとざわめきと匂いがあったが、すでに取り壊されて跡形もなく、かすかな記憶に残るだけだ。京大吉田寮に出入りする学生たちのしなやかでたくましい姿は、裏を返せば“絶滅危惧”の瀬戸際に立つこの学生寮の危うい現状を映し出している。この吉田寮を今あえてなくす理由はどこにもないですよね、総長。(草思社、2000円)

 評・三中信宏

読売新聞
2020年5月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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