夢眠ねむ「読むとなぜか涙が出てきた」切なくてタメになる介護本『親のトリセツ』

レビュー

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健康以下、介護未満親のトリセツ

『健康以下、介護未満親のトリセツ』

著者
カータン
出版社
KADOKAWA
ISBN
9784046047823
価格
1,320円(税込)

書籍情報:openBD

キュッと切なく、為になる 読めば流れる“涙”のわけは

[レビュアー] 夢眠ねむ(書店店主/元でんぱ組.incメンバー)

 読んでいると涙が出てきて、この涙の正体が一体何なのかいまいちわからなかった。この本を手にすることも一瞬戸惑うくらい親の老いを考えるだけでぐったりしてしまうのだが、介護が嫌という感情にはまだ届かない。

 著者のカータンさんと同じで、うちも姉と私の二人姉妹。そして母の口癖も同じで「娘たちに迷惑をかけたくない」である。インドでは「お前は迷惑をかけて生きているのだから、人のことも許してあげなさい」という教えがありよく日本人が感銘を受けているが、「人に迷惑をかけてはいけない」という日本人らしさは優しさとも受け取れて好きだ。本書では健康ではないが介護するまででもない両親のために奔走する著者の姿がある。お父さんの着替えを自分のルーツを知る旅と言ったり、勝手に捨てると母が怒る品にはわけがあったり、親だけでなく自分の老いも進んできたり……重くなりがちな内容なのに漫画のおかげで笑えて、キュッと切なくなって、きっといつか為になる。同じ状況の方には共感できて力になる一冊なのではなかろうか。

「姥捨山」という物語で、山に捨てられる姥はなんと60歳だそうだ。親はその歳をとっくに過ぎているけれど私の中では45歳くらいのままだし、私も親の前では子供のまま。ずっとそれが続いてほしいと心のどこかで願っている。大好きで何より強く頼れる存在であった「親」が「老いる」という事実がしんどいのか。本書でも出てくるセリフ「親が歳をとるってせつないね」、最初の涙のわけはこれかもしれない。

 うちの親は幸運にも元気で、娘が巣立つと穏やかに仲良くなり「お母さんは一人暮らししたことないし、お父さんは一人じゃ家のこと出来ないから死ぬなら同時がいいな」などとすっかり可愛い夫婦になっている。母は100歳超えが期待できる家系。父も肖(あやか)って二人で健康に100歳超え、どうかよろしくお願いします。

新潮社 週刊新潮
2020年6月11日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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