『自律神経を整えたいなら上咽頭を鍛えなさい』
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<東北の本棚>「免疫の要」弱点克服を
[レビュアー] 河北新報
カバーのそでに「慢性上咽頭炎を治せば、人生が変わる!」とうたい文句がある。眉に唾を付けたくもなるが、読み進めると印象は変わる。自律神経と全身の関係など専門分野の枠にとらわれない説明と具体的な症例は、読者を十分に納得させるだろう。
仙台市内でクリニックを開業する腎臓内科医師である著者は、風邪を契機に腎炎が悪化する原因を模索する過程で、慢性疲労やめまいなどさまざまな体調不良に慢性上咽頭炎が関係していることを学ぶ。そして、その治療法に患部を直接刺激する上咽頭擦過療法があることを知った。
上咽頭は鼻腔(びくう)の奥にあり、体に入った空気の流れの向きが変わる場所だ。ウイルスや細菌を攻撃するリンパ球がある繊毛上皮で表面が覆われている。免疫の要となる一方で、異物が付着しやすく、炎症が常態化しやすいという弱点がある。
上咽頭には自律神経のうち副交感神経が広く分布している。副交感神経は体全体に張り巡らされており、上咽頭の不調は、自律神経失調などさまざまなトラブルの元になるという。
上咽頭擦過療法は、消炎作用などがある塩化亜鉛溶液を染み込ませた綿棒で、上咽頭を強めにこすり付けるシンプルな施術。患部のウイルスや細菌を早期に退治する。さらに粘膜下のうっ血した静脈叢(そう)を刺激し、炎症物質を排出させる瀉血(しゃけつ)効果などもあるという。
患者によるセルフケアとして、鼻腔を直接洗い流す鼻うがいや、上咽頭をピンポイントで洗浄する方法もイラストで詳しく紹介する。
著者は1957年愛知県生まれ、防衛医科大卒。日本のIgA腎症治療に変革をもたらしたことで知られている。堀田修クリニック(仙台市若林区)院長。
世界文化社03(3262)5115=1320円。