『幕末遊撃隊』
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【気になる!】文庫『幕末遊撃隊』
[レビュアー] 産経新聞社
幕臣で心形刀流道場の後継ぎでもある剣豪・伊庭八郎は、ある秘密と覚悟を抱いて生きていた。幕府と薩摩、長州の駆け引き、大政奉還、江戸城引き渡しと動乱のなか、八郎は幕府が組織した遊撃隊で「ただ、微衷(びちゅう)をつくさんのみ」と戦いに身を投じ続ける。
「家は世の基盤(もとい)」という父の教えに納得しつつ、その家も、遊女らとの恋も捨て、時代にあらがおうとする心根はすがすがしい。
〈小稲は“着やせ”するたちであった〉。八郎と遊女の逢瀬を描写する冒頭の一文からグイグイと引き込まれる。没後30年、池波節に改めて魅せられた。(池波正太郎著、新潮文庫・710円+税)