現代経済学の直観的方法 長沼伸一郎著 講談社

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現代経済学の直観的方法

『現代経済学の直観的方法』

著者
長沼 伸一郎 [著]
出版社
講談社
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784065195031
発売日
2020/04/09
価格
2,640円(税込)

書籍情報:openBD

現代経済学の直観的方法 長沼伸一郎著 講談社

[レビュアー] 仲野徹(生命科学者・大阪大教授)

 あたらしいことを学ぶのは楽しい。しかし、難しくもある。医学部で病理学を教えていて、つくづくそう思う。多くの学生が病理学は難しいと言う。しかし、こちらから言わせると、実際には何も難しいことなど教えてはいない。

 ただ、難しく感じるのはわかる。知らない言葉や概念が次々と出てくるせいだ。全体を俯瞰(ふかん)すれば、あれとこれはこう繋(つな)がる、同じような考え方が何度も繰り返される、と容易に理解できる。しかし、そこまで達するのが大変だ。

 この本、タイトルのとおり、現代経済学のさまざまな事柄を直観的に理解させてくれる。だから、そのような学びにくさをまったく感じさせない。まるで魔法のような素晴らしさだ。

 資本主義とは何か、農業経済の敗退、インフレとデフレ、貿易の拡大、ケインズ経済学、貨幣の増殖、国際貨幣としてのドル、と、おおよそ時代に沿ってテーマが取り上げられていく。

 あまりにシンプルな図とわかりやすすぎる解説のために、もしかすると何か騙(だま)されているのではないかと訝(いぶか)ってしまったほどである。そして圧巻は、段階的に知識を得た上で展開される最後の2章、「仮想通貨とブロックチェーン」と「資本主義の将来はどこへ向かうのか」だ。

 ブロックチェーンについては、これまで何冊か読んだことがあるのだが、どうにも腹落ちしなかった。ところが、簡単な数学、いや、算数を用いたハッシュ関数の説明が頭に入ると、不思議なほどさくさく理解できた。なるほど、大規模なブロックチェーンの実現は難しそうだ。

 最終章では「縮退」という概念に基づき、現在の資本主義の本質的問題は何か、そして、どのような対処法が可能かが考察されていく。

 かつて『物理数学の直観的方法』でセンセーションを巻き起こした長沼伸一郎氏、執筆は足掛け20年にも及んだという。文理の融合を目指して9冊分の内容を1冊に押し込んだその目論見(もくろみ)は十二分に達せられている。脱帽!

読売新聞
2020年6月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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