驚異の連載満足度98%!! 『虜囚の犬』装画ができるまで。 イラストレーター・青依青さんインタビュー

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虜囚の犬

『虜囚の犬』

著者
櫛木 理宇 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784041092958
発売日
2020/07/09
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

驚異の連載満足度98%!! 『虜囚の犬』装画ができるまで。 イラストレーター・青依青さんインタビュー

[文] カドブン

雑誌連載時、カドブン配信で何度も月間読者数第1位になり、連載満足度アンケートでは 98%を獲得した櫛木理宇さんの『虜囚の犬』。どんでん返しのラストが待ち受けるミステリーとして話題沸騰中の本作が、いよいよ7月9日に単行本の発売を迎えます。連載では悲しげな瞳の犬、単行本では檻の中の少女という、強いインパクトを残すイラストを描かれた青依青さんに、 制作秘話をうかがいました。

■物語の強烈な筆致に一気に引き込まれた

――『虜囚の犬』は、安ホテルで死体となって発見された男の自宅を警察が訪れたところ、監禁されて痩せ細った女性および白骨死体が2体も見つかるという事件から始まります。「史上最悪の監禁犯を殺したのは、誰?」という謎を追うミステリーです。青依さんは、葉真中顕さんの『Blue』や知念実希人さんの『ムゲンのi』など数々の小説の装画を担当されていますが、本作を初めて読まれた時、どのような印象を持たれましたか?

青依:虐待や洗脳による負の連鎖という、時代を超えた普遍的なテーマを扱っている作品だと思いました。

子を虐待してしまう加害者自身、かつては被虐待児であったということは多々ありますが、それが生物濃縮のように煮詰まって事件として発露する様が強烈な筆致で描かれており、重いテーマながら一気に惹きこまれてしまいました。  

――おっしゃるように、「虐待」「洗脳」が何を生むかということが物語内では丁寧に描かれています。死んだ監禁犯は虐待を受け、少年時代にある罪を犯して主人公の白石と関わった過去があります。連載開始時、雑誌のデザイナーである鈴木成一さんからは、どのようなオーダーがありましたか?

青依:鈴木さんから頂いた大まかな方向性として、虐げられた弱々しい犬を一匹と、小物を描く場合は檻などで囚われているイメージを演出してほしいとのオーダーがありました。

――「犬」は、物語の重要なキーワードですね。死んだ監禁犯の少年時代を知る白石は、友人で刑事の和井田に相談を持ち掛けられ、彼が「ぼくは、犬だ」と繰り返していたことを思い出し……という部分に始まり、物語内で「犬」という単語は何度も登場します。鈴木さんのオーダーを踏まえて、青依さんはどのように描かれましたか?

青依:初めは虚ろで目に生気のない犬が檻の中に囚われている姿を描こうと考えていたのですが、檻という無機質なものではなく人の手によって自由を奪われているという構成に変更しました。 今後の展開の邪魔にならないように、 人の手で見えない首輪を嵌められ心理的に縛られているという演出で余白を持たせてみました。

雑誌連載時のイラスト
雑誌連載時のイラスト

――最終話まで扉イラストとして掲載されるため、第2話以降の展開にも合うようにされていたのですね。普段、装画を担当される際、他にどんなことを大事にしていらっしゃいますか?

青依:装画のお仕事の場合、読み進めながら読書ノートのような記録をつけるようにしています。  

登場人物の特徴、印象的な一文、浮かんできた感想等思いのまま綴って、あとからパズルを組み立てるように絵の構成を考えることも多いです。  

作画に関しては、書籍のカバーだと、実際のイラストはどれも手のひらくらいの大きさになるので、細かすぎる表現は印刷に出ないことも多いですが、肌の質感や髪の毛一本一本のハイライト等とことんこだわって描いてしまうことは多いです。

■「暗闇の少女」を描くまで

――次は、書籍のイラストです。印刷所の校正刷りを先日拝見し、青依さんが描かれた少女の、暗闇に浮かび上がるような美しい質感に、息を呑みました。書籍ではどのようなオーダーがありましたか?

青依:連載の扉絵制作時、具体的に拘束具などは描きませんでしたがそれとは打って変わって、高い位置に窓のある暗い部屋に鎖や首輪でつながれた少女と、幻の犬が見え隠れするイメージで描いてほしいと方向性の提示がありました。

単行本のイラスト
単行本のイラスト

――媒体やデザイナーによって、アプローチが変わるのが面白いですね。書籍の装画を描くにあたり、そのイメージに影響を与えた小説の場面や登場人物の描写は、どのようなものでしたか?

青依:原稿を通しで拝読する前はやはり冒頭で監禁されていた女性達のインパクトが強く、物語の空気を決める象徴的なシーンでもあったので、その女性の内誰か一人を描くことになるのだろうかと漠然と考えていたのですが、読み進めるうちに『皆誰もが何かに縛られている』という、もっと根本的な部分に触れた絵にしなくてはと思い直しました。

――初見では、薩摩治郎が監禁していた女性達の一人に感じられますが、最終章まで読んでからカバーイラストを見ると、違う景色も見えてくる……という奥深さがありますね。

青依:過去に起きた事件に囚われている者、言葉や暴力によって支配、洗脳される者、様々な形で起きている負の連鎖の始点にいる人物を描くのが相応しいのではないかと思い最終的にあのような形に持っていきました。

読了後書籍のカバーを見返して、その人物が誰なのか思いを馳せて頂ければ嬉しいです。

負の連鎖の始点となる人物、まさにこの人物が、最終章で強烈な余韻を残すサスペンスミステリーです。現在、期間限定で物語のためし読みを無料公開しています! 1ページ目から張り巡らされた伏線を、ぜひ楽しんでください!

KADOKAWA カドブン
2020年6月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

KADOKAWA

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