【児童書】『わたしたちのカメムシずかん やっかいものが宝ものになった話』

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【児童書】『わたしたちのカメムシずかん やっかいものが宝ものになった話』

[レビュアー] 黒沢綾子

■校長先生の提案で…

 舞台は岩手県北部の葛巻町(くずまきまち)。全校児童が29人という山間(やまあい)の小学校で本当にあった話だ。それも、臭くてやっかいな印象しかないカメムシに、皆が夢中になった話というから面白そう。

 葛巻でもカメムシは基本、嫌われている。洗濯物に付いたり農作物をダメにしたり、校舎にも大量に入ってきて掃除が大変だ。

 ただ、カメムシをよく観察すると、いろんな種類がいることに気づく。そこで校長先生はある日、「名前をしらべてみませんか?」と子供たちに提案した。

 カメムシを見つけたら写真を撮り、図鑑で名前をしらべて記録する。最初はとまどっていた児童たちも、いろんな色や模様、形のカメムシに出合うにつれ、探すのがどんどん楽しくなっていく。そしてついには自分たちの「カメムシずかん」を作ってしまうのだ。

 最初の1年間に児童たちが見つけたカメムシは35種。名前を知れば、嫌だった虫にも親近感がわき、生態を知ると、付き合い方がわかってくる。自発的に自然と向き合う子供たちの姿が頼もしい。(鈴木海花 文、はたこうしろう絵、福音館書店・1300円+税)

 黒沢綾子

産経新聞
2020年6月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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