<東北の本棚>妖怪たち親しみやすく

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関西弁で読む遠野物語

『関西弁で読む遠野物語』

著者
柳田国男 [著]/畑中章宏 [訳]/スケラッコ [イラスト]
出版社
エクスナレッジ
ISBN
9784767827261
発売日
2020/04/01
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>妖怪たち親しみやすく

[レビュアー] 河北新報

 「遠野物語」を楽しく読めるようにと、関西弁に翻訳した意欲作。民俗学者の柳田国男(1875~1962年)が遠野市出身の佐々木喜善(1886~1933年)から聞き書きしてまとめた物語は、普遍的な民俗資料とするべく文語体で編まれた。このため取っ付きにくさは否めなかった。本来の口語体に戻すだけでなく、現在国内で最も広く認知された関西弁に「翻訳」し妖怪や亡霊などが登場するミステリアスな世界に浸りやすくした、としている。
 触れ込み通り、「遠野郷には観音堂が八か所あるねんけど、そこにお祀りされてる観音は、ぜんぶ一本の木ぃで作られたそうです」とする序文を読むだけで引き込まれる。この序文と遠野の地勢についての記述に続き、(1)妖怪・霊獣・神さま(2)不思議な動物(3)怪異・不思議な話-の3編で構成。原文を関西弁に言い換えた上で、別途、各話の最後に共通語の解説文を付けた。
 「神さま」のうち、「オクナイサマ」の項では、「オクナイサマをお祀りしたら幸せになれるんやそうです」に続けて、田植えを手伝うと言う見知らぬ小僧に働かせたところ、知らぬ間に田植えが終わって小僧の姿が見えなくなり、自宅に戻るとオクナイサマの神棚まで泥の付いた足跡が続いていたことを紹介。解説文は「田植えを手伝うことで人を幸せにするなど、農業神の性格が強いのかもしれません」とまとめる。
 関西弁が軽妙に響く半面、物語特有の奇怪さが薄まるきらいもある。有名な「ザシキワラシ」の項では、「(ザシキワラシの去った後は)あんまし経たへんうちに、この家の主人とお供の二十数人が、茸の毒にあたって一日のうちにみな死んでしもてん。七歳の女の子が一人だけ生き残ってんけど、年取って子どももおらんまま、最近病気で亡くなったそうです」となる。(桜)

河北新報
2020年6月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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