『エトセトラ VOL.3』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
“女子=◯◯”というレッテルを解体する多様なフェミマガジン
[レビュアー] 倉本さおり(書評家、ライター)
先日、ネット上で大きな批判を巻き起こした「美術館女子」なるアート振興プロジェクト。館内のさまざまな作品をバックに女性アイドルを撮影したこの企画、プレスリリースには「“映える写真”を通じて女性目線で再発見していく」との文言がある。
あれ? いままで美術館を楽しんでいた女性の目線はなかったことにされているのかな? とか、そもそも美術館は美術品を鑑賞する場所であって女子を見るための場所じゃないのでは? 等々、全体を通じてツッコミどころの多い案件だが、とりあえず「女子」イコール「“映え”に目がない生き物」といった雑なレッテルを一方的に貼っている点に問題の一端がありそうだ。
そうした単線的な理解の在り方を痛快に正してくれるのが、昨年5月に創刊されたフェミマガジン『エトセトラ』のヒットだ。現在5刷6000部と堅調に売れ続けているVOL.1をはじめ、どの号も発売されるやすぐに増刷がかかっている。
特色は、責任編集者とテーマを毎号変えていく点だ。例えば、今年5月に発売されたばかりのVOL.3の特集は「私の私による私のための身体」(2刷5000部)。SNS上で大きな発信力を持つ美容ライターの長田杏奈氏が責任編集を務めたこともあり、アンケートには実に1334人もの回答が集まった。浮かび上がるのは、メディアや広告を通じて「女子イコール○○」という一律のイメージを押し付けられることに対する、十人十色の違和感だ。それは「多様な声を拾い上げる」という、誌名に込められた編集意図にもまさに通ずる。
「読者ひとりひとりに積極的に参加してもらう媒体を目指しているため、創刊号から欠かせないのが投稿ページの存在です。投書やそれを読むことを通じて誌面と対話してもらえたら、と」。発行者の松尾亜紀子氏は語る。「雑誌という形態を取ったのは、日常の中で、より気軽に“フェミニズム”について語りあえるような場を提示したかったから。ただし、中身に関してはわかりやすさではなく、ストレートに伝えることを大事にしています」(同)。