朝貢・海禁・互市 岩井茂樹著

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朝貢・海禁・互市

『朝貢・海禁・互市』

著者
岩井 茂樹 [著]
出版社
名古屋大学出版会
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784815809843
発売日
2020/03/09
価格
5,940円(税込)

書籍情報:openBD

朝貢・海禁・互市 岩井茂樹著

[レビュアー] 佐藤信(古代史学者・東京大名誉教授)

 東アジアにおける14~19世紀の中国明・清時代の通商と外交を、朝貢・海禁・互市のキーワードから読み解き、歴史像をとらえ直す研究。

 中国皇帝は、天下を支配する存在と中華思想で位置づけられ、外縁の蛮夷(ばんい)諸国は、皇帝に臣従し遣使して貢物する朝貢儀礼が行われた。格別な見返りのある朝貢は、諸国にとり有利な交易でもあった。

 朝貢儀礼は中国側の負担も大きく、交易で財政を益する方を選ぶ志向もある。そこで儀礼を離れ国家管理下に民間交易を行う互市が展開する。

 明は朝貢体制をめざし、密貿易を禁ずる海禁政策を採った。ただ内外商人の交易は禁じきれず、互市も採り入れる。清は海禁せず、互市が展開した。こうして朝貢・海禁・互市が絡みながら国際交易が進行した。理念と実益が交差する実態を柔軟に解く論旨は、論文調ながら説得力がある。

 やがて西欧が押し寄せ、対等の国家外交が迫られる。清は朝貢と扱うが、近代的国際関係に組み込まれていく。

 今日、自国中心理念の硬直性と、交流・経済の柔軟性との関係を考える際に、参考となるように思う。(名古屋大学出版会、5400円)

読売新聞
2020年6月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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