「戦争を知っている世代」という言葉の重さを噛みしめた

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戦後日本政治の総括

『戦後日本政治の総括』

著者
田原総一朗 [著]
出版社
岩波書店
ISBN
9784000614108
発売日
2020/06/06
価格
2,090円(税込)

書籍情報:openBD

「戦争を知っている世代」という言葉の重さを噛みしめた

[レビュアー] 立川談四楼(落語家)

『はじめに』で著者は「令和になって、戦争を知らない天皇が登場した。そういえば、安倍晋三首相も、菅義偉官房長官も戦争を知らない世代である」と言っています。

 著者は国民学校5年生で終戦を迎え、軍国少年の価値観を引っ繰り返されます。以来、高校、大学、そして社会へ出てからも日本共産党を信頼して生きます。もちろん、安保闘争にも参加します。

 1965年、テレビ東京(当時は東京12チャンネル)の社員だった著者は、モスクワの世界ドキュメンタリー会議に招かれ、ソ連に言論・表現の自由がまったくないことに気づきます。

 それからの著者の活躍は周知の通りですが、総理に質問をし、論戦を挑み、ある時は煙たがられ、そしてある時は信頼を得ることの何と価値のあることでしょうか。対話はテレビ、雑誌、時にオフレコであったりするわけですが、本書には、私たちが知らない生々しい話も満載なのです。

 知っていて、今回あらためて噛みしめたのは、田中角栄の「戦争を知っている世代が政治家でいる間は、日本は戦争をしない」との言葉で、角栄を始め、中曽根康弘、竹下登といった総理は、戦時中は軍人だったのです。

 本書は忘れていたことも思い出させてくれます。村山富市政権です。私は談志とともにブラジル公演の最中で、リオデジャネイロで政権発足を知り、日本で何があったのかと、大変驚いたことを思い出しました。

 二度に渡る安倍政権にも筆は割かれます。当然、モリ、カケ、サクラの問題に及ぶわけですが、著者独特の見解が読み所です。

「安倍内閣、そして安倍首相自身にも認め難い多くの問題がある」としつつも、今はコロナと全力で戦えと励ましつづけるしかないとしています。

新潮社 週刊新潮
2020年7月16日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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