まんが訳 酒呑童子絵巻 大塚英志監修、山本忠宏編

レビュー

6
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まんが訳 酒呑童子絵巻

『まんが訳 酒呑童子絵巻』

著者
大塚 英志 [編集]/山本 忠宏 [編集]
出版社
筑摩書房
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784480073150
発売日
2020/05/07
価格
1,078円(税込)

書籍情報:openBD

まんが訳 酒呑童子絵巻 大塚英志監修、山本忠宏編

[レビュアー] 佐藤信(古代史学者・東京大名誉教授)

 古典の絵巻物を、現代まんがの手法で表現し直す「まんが訳」の試み。

 まんが訳では、絵巻物を解釈して、その画面を部分的に切り貼り・コマ割りし、せりふの吹き出しを付けて見開きの紙面構成に組み改める。

 絵巻の画を利用して再構成することから、まんが家が作画する古典再生の創作とはいえないが、人物表情の大写しには迫力があり、古典を現代に再現する一手法といえる。

 絵巻物は、絵画と詞書(ことばがき)が交互に続く巻物をひろげながら物語が展開する。その古典美術的価値を尊重する立場からは、まんが訳に疑念を感じる人もいよう。その点、本書がまんが訳した『酒呑童子絵巻』等の絵巻は、監修・編者の属する国際日本文化研究センター所蔵ゆえ、出版できたとも思われる。

 しかし最近は、古典の現代語訳よりもまんが・アニメによる翻案の方が親しまれてもいる。まんが版の日本の古典・歴史が各種刊行され、多くの読者を獲得している。

 まんが訳で絵巻物研究がどう深まるかは課題だが、古典への入口を広げる研究可視化の試みとして、評価できる。(ちくま新書、980円)

読売新聞
2020年7月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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