「がんばっている」は危険信号。SNSに投稿する部下の本音の察し方

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どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解

『どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解』

著者
吉田 幸弘 [著]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784478110119
発売日
2020/06/12
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「がんばっている」は危険信号。SNSに投稿する部下の本音の察し方

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「伝えたつもりが伝わっていなかった」というようなコミュニケーションの問題は、ビジネスの現場においても日常的に起きているもの。

どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解』(吉田幸弘 著、ダイヤモンド社)の著者も、本書の冒頭でまずそのことを指摘しています。

経営者・管理職向けに部下育成やリーダーシップ、チームビルディングなどに関するサポートを手がけている人物。

クライアントは大手企業から商業団体、観光庁に至るまで多彩で、年間100回以上の研修や講演を行っているそうです。

受講者の数は3万人を超えるため、数多く見てきたのは「部下にどういうことばを使ったらいいか」について悩むリーダーたちの姿。

言葉は「武器」にもなるし、「凶器」にもなります。 いい言葉は部下のモチベーションを上げ、成長を加速させます。

その一方で、言葉が部下との信頼関係を壊してしまう例は枚挙に暇がありません。(「はじめに」より)

きちんと納得感のあることばを伝えるリーダーもいれば、曖昧なことばで伝えるリーダーもいるということ。

そして重要なポイントは、心を動かす「ことばがけ」のできるリーダーに部下はついてくるという事実。

そこで本書では39項目におよぶ「リーダーの悩み」を、実際に現場で起きているケースから厳選して紹介しているのです。

きょうは第4章「イマドキ部下に効くリーダーの言葉がけ」のなかから、「部下のSNSに「負の投稿」が目立ち始めたら危険信号」に注目してみたいと思います。

SNSへの投稿は部下の心の声

×SNSをチェックして注意する

○本心をチェックして不満を取り除く

現代において、なにかと便利なSNSは無視できない存在。しかし、使い方によっては問題を生むことにもなります。

「きょうも遅くまでがんばった」というポジティブな投稿のつもりが、「ブラック企業ではないか」というネガティブな印象を与えてしまうこともあるわけです。

もちろん、使い方に関しては個人の裁量に任せるしかないものの、会社の危機管理場、ケアはやはり必要。

リーダーにとってもSNSは無視できませんが、「SNSでネガティブな投稿はしないように」と負の投稿に対して注意を払うと、プライベートまで監視されていると思われてしまう可能性も。

なぜならSNSへの投稿は衝動的な感情から起きることが多く、部下の本音だから

つまりリーダーはこうした負の投稿を意識することで、部下の不安や悩みを把握することができるのです。(162ページより)

「がんばっている」投稿はネガティブな心の表れ

ただし、一見すると「がんばっている」ことをアピールするようなことばが不満を表している場合も多いといいます。

では、どのような投稿が危ないのでしょうか?

① 「充実」

SNS「今日も遅くまで残業。仕事、充実してるんだよね」

心の声「担当している仕事の量が多すぎるんだよ」

「充実」は、無理に自分を奮い立たせていることば。同じように、「遅く」ということばも危険だそうです。

それは、「仕事が多すぎる。早く帰りたい」という思いを暗に示したものだから。

いわば、「自分はこれだけ遅くまで残っているんだから」とアピールしたいということ。

なにより公開投稿の場合、コンプライアンス違反を指摘される危険性もあります。

② 「がんばっている」

SNS「うちの課はがんばっているよ」

心の声「他の課はラクしているな」

「がんばっている」は危険なワードで、のことばが投稿されたときは、大きな不満を抱えているといえるそうです。

たしかに心身を安定させながらがんばっているとしたら、その人は満たされていることになります。

したがって、「がんばっている」などとは投稿しないわけです。

③ 「寝てない」

SNS「今週はずっと3時間しか寝てない」

心の声「私ばかりがんばっているのに認めてもらっていない」

このことばを発しているときは、無理に自分を奮い立たせているもの。いいかえれば、「心身ともに限界」の状態だということです。

「これだけがんばっている」と自分に酔っているケースもあるものの、心身は疲弊しているので注意が必要。

④ 「大変」

SNS「クレームの対応で大変だった」

心の声「お客様にさんざん怒られて大変だったよ。上司にフォローしてほしかったよ」

「大変」ということばは、「気づいてほしい、誰かに助けてほしかった」という思いの現れ

しかも、はっきり「大変」と投稿しているのは、不満がかなり大きくなっている状態だといいます。

特に、普段あまり愚痴や文句を言わない部下が書いていた場合は、かなりの注意が必要。

⑤ 機密情報を公開する

SNS「この在庫の山、一体どうするんだろうな」

心の声「こんな在庫抱えて、この会社もうヤダ」

会社の機密情報を投稿するのは、もちろんコンプライアンス違反。

昨今は、それを研修で学んでいることが多いはずですが、それでも投稿するのは、かなり心身が疲れているから

退職を考えていることも考えられます。

もし、こうしたことばを耳にしたら、「ちょっと話そうか」と早急に部下と1対1で話し、「なにに困っているのか」「どんな不満があるのか」を聞くようにすることが大切。

多くの場合はそれだけで、不満の目を摘むことができるそうです。

リーダーの場合、「見張る」という感覚だけでは足りないと著者はいいます。負の投稿をする部下の心まで読み解く必要があるということです。(164ページより)

リーダーが幸せになれば、組織内のメンバーも幸せになるもの。著者はそう主張しています。もちろんリーダーには責任があり、仕事も大変。

しかし、組織を動かせる、やりがいのある仕事でもあるはず。

だからこそ、「リーダーのひと言」によって部下を勇気づけ、やる気を後押しすべきだというのです。

そこで本書を参考にしながら、「ことばがけ」の極意を身につけてみてはいかがでしょうか?

Photo: 印南敦史

Source: ダイヤモンド社

メディアジーン lifehacker
2020年7月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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