ルポ 技能実習生 澤田晃宏著 ちくま新書

レビュー

7
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ルポ 技能実習生

『ルポ 技能実習生』

著者
澤田 晃宏 [著]
出版社
筑摩書房
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784480073075
発売日
2020/05/07
価格
946円(税込)

書籍情報:openBD

ルポ 技能実習生 澤田晃宏著 ちくま新書

[レビュアー] 稲野和利(ふるさと財団理事長)

 日本国内の外国人労働者数は約166万人(2019年10月末)、うち約41万人が「技能実習生」である。近年はベトナム人実習生が急増し、2011年末の約1万4千人から昨年末で22万人弱となっている。本書はそのベトナム人技能実習生に焦点を当て、丹念な取材により制度を巡る現実に正面から向き合い、安易な感情論とは距離を置いて公正に論評した労作である。複雑な全体構造が可視化されるとともに、読者は思わず考えこんでしまうであろう。

 ベトナム人技能実習生を取り巻く状況は複雑である。日本国は制度の趣旨として技術・知識移転による「国際貢献」をうたい、ベトナム政府は「労働力輸出・外貨獲得」を政策として掲げる。実習生は一定期間にできるだけ多くの金を稼ぎ母国に持ち帰ることを目標とする。一方、雇用先の中小零細企業は安価な労働力確保により事業の維持・存続を企図する。明らかに同床異夢の世界だ。結果、様々な便宜が横行し、不正も後を絶たない。前職要件(日本で従事する業務と同種の業務経験が必要)のための偽造書類作成、現地「送り出し機関」と日本の「監理団体」との癒着、経営者による搾取やイジメ、お金を稼ぐための実習生の「失踪」等。一方で、多くの実習生は実に力強く生きている。最低賃金に近い処遇でも、3年間で300万円程度を貯金し帰国後に家を持つという目標は実現可能なものとして存在する。誰もその夢の存在は否定できない。著者は、過酷で矛盾含みの現実の中でよりよい制度運営を志し日々努力する日越両国の関係者にも光を当てる。小さいが確かな希望の光が存在することが理解できる。

 2019年に創設された「人材不足への対応」をうたう「特定技能制度」は当初の目論見(もくろみ)に反し、利用者数が大きく伸び悩む。「一定期間の低賃金労働力確保」という便宜的思考様式には限界があるのだろう。外国人材に選ばれる国になるための道は遠い。

読売新聞
2020年7月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加