柳家権太楼著、大森克己・写真 「心眼 柳家権太楼」

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心眼 柳家権太楼

『心眼 柳家権太楼』

著者
柳家 権太楼 [著]/大森 克己 [写真]
出版社
平凡社
ジャンル
芸術・生活/諸芸・娯楽
ISBN
9784582654103
発売日
2020/03/21
価格
4,290円(税込)

書籍情報:openBD

柳家権太楼著、大森克己・写真 「心眼 柳家権太楼」

[レビュアー] 読売新聞

 落語は「見る」ではなく「聴く」と表す。その言葉通り、噺家(はなしか)が口調や声音を操り様々な人物に変化(へんげ)る様に酔うのだが、写真家・大森克己は、柳家権太楼の一席を、高座に上がる段からサゲまで通して写真で魅せる試みに挑んだ。

 演目は、三遊亭圓朝(えんちょう)の「心眼」。あんま師・梅喜はお薬師様への願いが通じ、晴れて目が開く。が、それまで人の心根を感受できていた彼が、表面的な美醜に惑わされるようになる。皮肉にも、見えたがために真実から遠ざかってしまうのだ。

 スタジオの白いホリゾントの前でこの噺を演じる権太楼の表情や仕草(しぐさ)が、女房のお竹、上総屋の旦那と、人物が入れ替わるたび変貌(へんぼう)する。巻末掲載の録音を書き起こした「心眼」に照らせば、その多彩さや凄(すご)みにより圧倒される。そう、落語とは、なにもなかった空間に、人物や町並みを実物よろしく浮かび上がらせる手品だったのだ。(平凡社、3900円)評・木内昇

読売新聞
2020年7月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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