マルチタスクは幻想?集中してパフォーマンスを上げるワンタスク戦略

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図解でわかる一点集中のすごいコツ

『図解でわかる一点集中のすごいコツ』

著者
碓井孝介 [著]
出版社
CCCメディアハウス
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784484202136
発売日
2020/04/22
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

マルチタスクは幻想?集中してパフォーマンスを上げるワンタスク戦略

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

図解でわかる一点集中のすごいコツ 最強の時短仕事術』(碓井孝介 著、CCCメディアハウス)の著者は本書の冒頭で、「『マルチタスク』に騙されてはいけない」と訴えています。

同時進行で複数のタスクをこなす「マルチタスク」は幻想です。複数の事柄を同時に考えることすらできないのですから、「マルチタスク」など存在しないのです。 そして、そもそも無理な「マルチタスク」を用いてタスクを処理しようとするから、なかなかタスクが終わりません。

「マルチタスク」で取り組もうとするから、終わったと思っても結果が出ません。(「はじめにーーもう「一つ」に集中するしかない」より)

士業事務所経営、会社経営、監査業務、執筆、講演などの複数の仕事に取り組んでいるという人物。そう聞けば、いかにもマルチタスクを実践しているようにも思えます。

ところが実際には「マルチタスカー」ではなく、むしろ正反対の「ワンタスク戦略」に基づいて日々のタスクに取り組む「ワンタスカー」だというのです。

つまり本書ではそのような立場から、「複数のタスクを同時並行でこなすのではなく、ひとつひとつの事柄に集中して着実に処理すること」の重要性を明らかにし、実践するためのメソッドを提案しているのです。

目の前のひとつのタスクに集中し、それが終わったら次のタスクに集中する。そのタスクも処理できたら、また次のタスクに集中して取り組む。

そうやって、日々の作業を「ひとつずつ」処理することが大切なのだと。

第1章「『一つに集中する』これだけが結果を出す唯一の方法」を見てみましょう。

もう「ワンタスク戦略」しかない

ひとつのタスクに集中するための工夫はいくつもありますが、その核をなすものは「ワンタスク戦略」なのだと著者はいいます。

ワンタスク戦略を軸としながら、それ以外の工夫をも併用することで、着実な成果を積み上げることが可能になるという考え方。

ワンタスク戦略は、「ひとつに集中できた状況」を再現し、その状況を「物理的に」つくり出すことを基本としたもの

なお、「ひとつに集中できたとき」に共通しているのは、「ほかのタスクがそもそもない(あったとしても目に入らない)」という状況だそうです。

そのいい例が、集中して取り組んだ受験勉強です。

学生時代は、ビジネスパーソンである現在にくらべればタスクの数が(受験勉強という)ひとつしかない状況だったということ。

ワンタスク戦略は、この「ほかのタスクがそもそもない(あったとしても目に入らない)」という場面を再現することから始めます。

一つのタスクに没頭できた頃の状況を再現することが、大切なのです。 その再現の仕方として、「物理的に」ほかのタスクがない状況を作ることが必要です。(23ページより)

物理的にほかのタスクがない状況(正確には、ほかのタスクがあるのだけれど、目の前にはひとつのタスクしか登場しない状況)をつくり出すことができれば、自然と目の前のタスクに集中できるわけです。

ちなみに絶対に避けるべきは、頭のなかだけでワンタスクを実現しようとすること。

「ひとつに集中しなければ」と頭のなかだけで思っても、なかなかひとつのタスクに集中することはできないからです。(22ページより)

複数のタスクを一列に並べて、ひとつずつこなす

ひとつのタスクしか登場しないワンタスク戦略は、「タスクの整理」から始めるといいそうです。

タスクは自分のことを取り囲むようにして、四方八方に存在するもの。それが、ひとつに集中できない大きな原因だということです。

そこで、まずは四方八方に散らばっているタスクを整理し、一列に並べることが大切。

そしてその後は、一列に並んだタスクを真正面から見るのだそうです。上から俯瞰するのではなく、「真正面から」見るのがポイント。

なぜなら上から見てしまうと、目の前のタスク以外にも取り組むべきタスクがたくさんあるように思えてしまうから。

ひとつのタスクに集中したいときにはそれが邪魔になるため、真正面から眺めるべきだということです。(24ページより)

タスク処理の手順をルーティン化・定番化

ひとつのタスクに集中するために必要なことは2つあり、そのひとつ目は日々のタスク処理を「ルーティン化・定番化」して用いることだそう。

多少の変化はあったとしても、一般的には毎日、似たようなタスクを処理しているもの。

そのためタスク処理の仕方をルーティン化すれば、タスクへの向き合い方を固めてしまえるというわけです。

たとえば著者の場合はデスクワークであり、始業時刻がほとんど変わらないため、1日のタスクの整理、進捗確認などは、毎日同じ時間に、同じ手順で取り組んでいるのだといいます。

また、「ひとつに集中するための工夫は○○」「顧客対応のときは○○」というように、各タスク処理の場面で使う工夫にも定番のものがあるそうです。

タスク処理の手順をルーティン化し、それぞれのタスク処理で使う工夫を定番化することは効率アップにつながるはず。

ちなみにルーティン化・定番化のコツは、タスクの整理や進捗の確認など、タスク処理の大枠を固めるための時間を固定すること

たとえば始業前にタスクの整理をし、午後1時にもう一度タスクを確認すると決めてしまうわけです。(26ページより)

ひとつに集中する工夫をカスタマイズする

ふたつ目は、ひとつに集中する工夫を、自分のタスクに合うように「カスタマイズ」すること。

タスクの種類や内容は人それぞれで、抱えているタスクはひとりずつ違うため、自分流にカスタマイズすることが大切

自分の仕事や生活のスタイルに合わせ、ひとつのタスクに集中するための工夫をしていくということです。

とはいっても難しく考える必要はなし。要は、自分がやりたいように変えていけばいいのです。(28ページより)

こうした基本的な考え方に従い、以後の章では「ルーティン化」「カスタマイズ化」の方法をより具体的に紹介しています。

それらを参考にしながらワンタスクにシフトしてみれば、思いのほか大きな成果を得ることができそうです。

Photo: 印南敦史

Source: CCCメディアハウス

メディアジーン lifehacker
2020年7月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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