明治が歴史になったとき 佐藤雄基編

レビュー

7
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明治が歴史になったとき

『明治が歴史になったとき』

著者
佐藤雄基 [編集]
出版社
勉誠出版
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784585227144
発売日
2020/06/30
価格
3,080円(税込)

書籍情報:openBD

明治が歴史になったとき 佐藤雄基編

[レビュアー] 苅部直(政治学者・東京大教授)

 日本の近代史に関して、大学で本格的に研究・教育が行われるようになったのは、戦後に入ってからである。大久保利謙(としあき)は、その出発の時期から講義を行い、研究者を育てた第一世代の歴史学者。明治の政治家、大久保利通の孫でもあった。この本は「史学史としての大久保利謙」という副題がついている。さまざまな角度から、歴史学そのものの歴史のうちに、その業績を位置づけた論集である。

 戦前と戦後の世相の変化を「史料の運命において肌身で感得した」という大久保利謙の言葉が重い。戦前から憲政史の史料収集にたずさわり、戦後は国立国会図書館の憲政資料室の運営も担った人物である。

 戦後改革による社会の変動で、旧特権層の史料が大量に放出・公開された。みずからも華族として境遇の転変を体験したことから生じる、複雑な思いがこもっている。

 マルクス主義歴史学に対する違和感や、丸山眞男ら政治学系の研究者とのすれ違いなど、明治史研究が始まる過程のドラマも追体験できる。歴史学それ自体がまた、歴史の重要な登場人物なのである。(勉誠出版、2800円)

読売新聞
2020年7月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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