『37歳独身、年収300万円知っておきたいお金のこと = 37 years old,single,annual income of 3 million yen.What you need to know about money.』
- 著者
- 横山, 光昭, 1971-
- 出版社
- 毎日新聞出版
- ISBN
- 9784620326351
- 価格
- 1,320円(税込)
書籍情報:openBD
37歳独身年収300万。不安を解消して、強い家計をつくる「お金の3年計画」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
タイトルからもわかるとおり、『37歳独身年収300万 知っておきたいお金のこと』(横山光昭 著、毎日新聞出版)で取り上げられているのは、30代半ばから40代にかけてのビジネスパーソンのお金の話。
自分に必要な情報を手に入れ、老後に備える方法を解説しているわけです。
「家計再生コンサルタント」である著者は本書の冒頭で「お金を貯められない人の特徴」を挙げています。
・特売品を買いに行くと、ついでに他の物も買ってしまう
・誘われたら、現金の持ち合わせがなくても飲み会に参加する
・時間を守るつもりが、つい遅れてしまう
・レシートはもらわないし、財布の中身も気にしない
・老後のことと明日のこと、心配なのは明日の方
(35ページより)
浮かんでくるのは、少しルーズで、意思が弱く、甘い誘惑に流されやすく、先々のことはあまり考えないというイメージ。
でも、それは「お金を貯められる人」の性格にも当てはまることなのだそうです。
だとすれば、お金を貯められる人はなにが違うのでしょうか?
ポイントは、自分にある弱さを自覚していること。そして、客観的な物事の見方や合理的な判断を妨げる心理があることを知り、対策を立てていること。
対して、お金が貯まらない人は「お金の基本」から逸脱してしまう行動が習慣になっているもの。
それらをすべて修正するのは困難ですが、ひとつでも気づき、なおしていくことでお金の使い方が変わっていくのだといいます。
そのような考え方に基づく本書の第1章「老後のお金に困らないための3年改革」の中から、もっとも基本的なポイントを抜き出してみましょう。
37歳、お金の不安を膨らませる3つのわからなさ
ストレートに大学を卒業したとしたら、37歳は社会人15年目。
会社内での立ち位置は明確になり、部下や後輩を指導している人も少なくないはず。あるいは、転職や独立を選択する人もいることでしょう。
将来に目を向けてみれば、年金の受給開始年齢である65歳まで28年。
「これまでのキャリア」よりも「これからのキャリア」のほうが長い中堅世代だということになりますが、本書もそんな人たちをイメージして書かれているようです。
ところで著者のところへ訪れる人々の多くは、お金に関する不安を抱えており、その根底には次の3つのわからなさがあるのだそうです。
① 人生でいくらお金を使うのかがわからない
② この先どのくらい稼げるのかがわからない
③ 多くのお金が必要になったとき、それを用意する方法がわからない
(39〜40ページより)
① は「支出」、②は「収入」、③は「貯蓄」と「投資」の問題ということになります。(38ページより)
お金の不安のない強い家計をつくるための3つのアドバイス
この3つのわからなさは、著者が「強い家計」をつくるためのお金の基本として伝えている3つのアドバイスとぴったり重なるのだとか。
① 支出を抑えること
② 収入を上げること
③ 貯蓄を増やすこと
(41ページより)
お金の不安がない「強い家計」をつくりたいなら、これら3つのアドバイスをすべて実行することが理想。
とはいっても、いきなりすべてに取り組むのは難しいので、まずはひとつだけでも意識して取り組んでいくべきだといいます。
仮に現在の家計が、「毎月、赤字が出ている」「クレジットカードのキャッシングで回している」「親からの仕送りに頼っている」など危険な状態にあったとしましょう。
それでも、3つのアドバイスのうち1つまたは2つを実行できれば、いくらでも立てなおすことができるそうです。
やり方は多く、しかも行動を起こすことで確実によい方向へ変化していくのがお金のいいところ。
なにもしなければ悪化するでしょうが、支出、収入、貯蓄のいずれかに意識的になれれば、効果が期待できるということです。(40ページより)
37歳から3年計画で、お金の不安のない強い家計をつくっていく
そこで本書では、37歳からの3年計画で、3つのアドバイスを実行することにより、「お金の不安」を解消していこうと考えているわけです。
その3年計画を確認してみましょう。
1年目/37歳→あなたの家計の現状を把握します。毎月出ていくお金に注目し、支出を把握。数字で客観視し、支出をコントロールできる感覚を身につけます。
2年目/38歳→お金を貯められる仕組みを知り、貯金ができる家計にしていきます。
3年目/39歳→支出をコントロールできるようになり、お金が貯められる仕組みができたら、次はお金を増やすことのできる家計に。
(42〜43ページより)
このように段階的に、「強い家計」をつくっていくことを本書では目指しているのです。
ただし著者は、闇雲に「節約しましょう」「お金を貯めましょう」とアドバイスするつもりはないのだそうです。
なぜなら、40代に向かう時期だからこそ、大事にしていきたいことがあるから。
それは自分への投資(自己投資)。40代に向かう3年間でお金の基本を身につけ、将来に備えていくのはもちろん大切なこと。
しかしこれからは、自分を磨き、「稼ぐ力=人的資本」を伸ばさなければ生きていけない時代でもあります。
特に30代後半は、20代から30代前半で培った能力や経験を土台として、将来に向けた人的資本を充実させる時間のある時期。
そこで、キャリアアップにつながる学び、転職や独立の準備、資格取得のための勉強、副業のための試行錯誤などに自己投資すべきだというのです。
だからこそ3年計画で「お金の不安」を解消し、安定した強い家計をつくりながら、自己投資のためのお金を生み出すイメージを持つべきだという考え方。
支出を見なおし、貯金のできる仕組みをつくり、人的資本を伸ばす自己投資に使えるお金も用意していく。
そうすれば、結果的には稼ぐ力を伸ばすこともでき、ひいては将来の安心につながっていくということです。(42ページより)
人はつい、目先の欲に負けてしまいがち。しかし、お金に関する知識を手に入れれば、そんな欲に負ける回数を減らすことができると著者はいいます。
そこで本書を通じ、必要な知識をしっかりと身につけておきたいところです。
Photo: 印南敦史
Source: 毎日新聞出版