医療の現実を描き続けてきた現役医師である著者の最新作。がんや糖尿病を患う認知症患者の専門病棟の医師、三杉の元に、元同僚で鳴かず飛ばずの作家の坂崎が現れ、三杉をモデルに「認知症小説」の問題作を書こうと迫ってくる。坂崎の野望と三杉の隠された過去が絡みあい、追い詰められる三杉だが…。
ミステリー仕立ての物語の中に今日的テーマがぎっしりと詰まっている。自身の要望をうまく伝えられない認知症患者の治療の選択をだれが行うのか、生きるとは、ほどよい治療とは何か、さまざまなことを考えさせる。(朝日新聞出版・1700円+税)
-
2020年8月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです