カトリーヌ10世が読む、編集者トガッチのファッション指南本

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結果を出す男はなぜ「服」にこだわるのか

『結果を出す男はなぜ「服」にこだわるのか』

著者
戸賀 敬城 [著]
出版社
集英社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784087441451
発売日
2020/08/20
価格
660円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

カトリーヌ10世が読む、編集者トガッチのファッション指南本

[レビュアー] カトリーヌ10世(リベラルアーツ王国の女王)

錦の心に「正しい」服を

 日本のビジネスシーンを見渡しますと、残念を通り越して国辱レベルの装いの男性が一定の割合で存在しています。彼らは往々にして、頭がよく仕事もできます。ただ、外見に無頓着なのです。あるいは、「ボロは着てても心は錦」教を信奉し、身なりがよいことをあたかも詐欺師、よくて軽薄の証(あかし)のようにみなしているようです。
 なんともったいない。錦の心、シャープな頭、優れた仕事能力。これらを過不足なく相手に伝えるための確実な戦略、それが服装術なのですから、使わない手はありません。
 では、正しい服装術とは? 服装指南の情報は世にあふれているのに現実が変わっていないということは、教えが届いていないということですね。服装指南はやはり、「誰が教えるのか? 」が重要で、外見の説得力を欠く評論家がいくら正論を説いてもダメなのです。
 その点、トガッチこと戸賀敬城(ひろくに)さんは、服装指南人として合格です。メンズファッション誌の編集長として誰もが認める結果を出してきたビジネスパーソンであり、教えに説得力をもたせるかっこよさがあります。チャラく見られがちなのが玉に瑕(きず)ですが、実際にお話しすると誠実でまじめなビジネスパーソンであることがわかります。このギャップの威力を自覚するほど外見のコントロール力に長(た)けたトガッチの指南ですから、試す価値は十分あります。
 ところで、服装指南においてはイギリス原理主義を貫く保守派、イタリア的寛(くつろ)ぎを支持するリラックス派、そして両者のいいところどりをする日本的中道派があります。トガッチは中道派を基本にしつつ、どの流派にも属さないトガッた指南を時折、さしはさんできます。たとえば「傘はあげてしまえ」「スーツは三万円で買い、三年で捨てろ」「週末を感じさせるブレスレットをつけろ」など。流派が違えば眉をひそめられることもある教えであると了解しつつ、試行錯誤して自分の基準を見つけていただきたい。その暁(あかつき)には、「スタイル」なるものが手に入り、ビジネスにおけるあなたのステージも、格段に上がりやすくなっているはずです。

カトリーヌ10世
かとりーぬ・じゅっせい●リベラルアーツ王国の女王

青春と読書
2020年9月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

集英社

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