AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争 庭田杏珠、渡邉英徳著/戦争と郵便 片山七三雄ほか監修

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AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争

『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』

著者
庭田杏珠 [著]/渡邉英徳 [著]
出版社
光文社
ジャンル
芸術・生活/写真・工芸
ISBN
9784334044817
発売日
2020/07/16
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

戦後75年・手紙が語る戦争の記憶 戦争と郵便

『戦後75年・手紙が語る戦争の記憶 戦争と郵便』

著者
片山七三雄 [著]
出版社
切手の博物館
ISBN
9784889638431
発売日
2020/07/25
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争 庭田杏珠、渡邉英徳著/戦争と郵便 片山七三雄ほか監修

[レビュアー] 木内昇(作家)

 満開の桜を楽しむ家族の宴。透き通った元安川で手長海老(えび)を捕る子供たち。祭りの装飾が施された本通商店街。戦前の広島の町は、溜息(ためいき)が出るほど豊かで美しかった。『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』は、個人所蔵のアルバムや報道写真を、AIによる自動色つけ技術と証言をもとにした色補正でカラー化した写真集だ。開戦間近の1941年から終戦、復興へ向かう1946年まで、日本各地の光景に加え、真珠湾やドイツのユダヤ人収容所など各国の戦況が収められている。

 東京、大阪をはじめ各都市を襲った空襲の航空写真、米軍に取り囲まれる沖縄の人々、そして広島への原爆投下。資料としての価値も高いが、特筆すべきは市民の目線を軸に置いた構成だろう。中に、特攻隊として出撃する兵士を飛行場で手を振って見送る家族の写真がある。あの父は母はこのあと、二度と息子が帰ってくることのない家までの道のりを、どんな気持ちで辿(たど)ったのだろうか。

 当時の色が再現されたことで、写真の中の人々に血が通いはじめる。彼らが身近な知人に思えてくる。そうしてその多くが、戦争で命を奪われていることに愕然(がくぜん)とする。

 『戦争と郵便』は、日清日露から太平洋戦争まで、戦地と内地を結んだ軍事郵便を主に編まれた一書。勇ましく戦況を伝える手紙や、南洋諸島の生物を描いた葉書。硫黄島やビルマなど激戦地からの通信なのに、元気だから心配するな、と家族を気遣う言葉が並ぶ。当時の郵便事情が子細に解説された点でも貴重だ。

 戦争体験者は高齢化し、戦争資料館は来場者減少で存続が危ぶまれている。戦後75年。「戦争はいけない」という言葉すら形骸化しつつある昨今、この二冊は戦争を身に引きつけ、皮膚感覚で考える材料となるだろう。戦争はいけない、という以上に途方もなく「怖い」のだ。けっしてこれを昔話と切り離してはならない。なぜならそうすることで、次なる悲劇の扉が開いてしまうからだ。

 ◇にわた・あんじゅ=2001年、広島県生まれ。戦争体験の継承に取り組む。

読売新聞
2020年8月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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