ビールの売り子にまで及ぶ“巨人”愛に溢れた分析

レビュー

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令和の巨人軍

『令和の巨人軍』

著者
中溝 康隆 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
芸術・生活/体育・スポーツ
ISBN
9784106108655
発売日
2020/06/17
価格
814円(税込)

書籍情報:openBD

ビールの売り子にまで及ぶ“巨人”愛に溢れた分析

[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)

 プロ野球開幕から2カ月。普段とはいろいろと異なるシーズンながら、やはりこういう時こそ野球とはいいものだと感じているファンは多いことだろう。

 そのファンたちの中にあって、近年最も肩身の狭い思いをしているのは、巨人ファンなのではないだろうか。金に物を言わせた補強戦略、功労者に対する冷遇、相次ぐ不祥事など、アンチファンに叩かれるのもやむを得ない事態が続いた。平成後期は、G党にとって胸を張ってファンですとは名乗りにくい、どうにも歯がゆい時代であったのだ。

 そんな中に現れたのが、本書『令和の巨人軍』の著者・中溝康隆氏だ。二〇一〇年に巨人ファンブロガーとして登場するや、データに基づきつつも「エモい」分析と、タイミングよく挿入される爽快な決めゼリフでまたたく間に人気を博し、一挙にトップクラスの野球ライターにのし上がった。

 本書では、かつてのONや松井のようなスターもおらず、あらゆる面で絶対的な存在ではなくなったチームの姿を、ジャイアンツ愛に溢れた筆致で様々な角度から描き出す。その対象は、坂本や菅野といった主力選手はもちろん、ベテランの脇役や期待の若手、東京ドームの弁当やビールの売り子にまで及ぶ。

 インタビュー中心のスポーツドキュメントでも、流行りのデータ解析でもなく、あくまでファン目線で読者と思いを共有するスタイル。いろいろな楽しみ方のできる野球という競技のユニークさを、改めて思わされる。

新潮社 週刊新潮
2020年8月27日秋初月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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