BLの教科書 堀あきこ、守如子(もり・なおこ)編

レビュー

6
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BLの教科書

『BLの教科書』

著者
堀 あきこ [編集]/守 如子 [編集]
出版社
有斐閣
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784641174542
発売日
2020/07/20
価格
2,640円(税込)

書籍情報:openBD

BLの教科書 堀あきこ、守如子(もり・なおこ)編

[レビュアー] 川口晴美(詩人)

◆偏見変える研究入門書

 男子どうしの恋愛を中心としたさまざまな関係性を描くマンガや小説はBL(ボーイズラブ)と呼ばれ、数多(あまた)の女性読者に支えられて一大ジャンルに成長した。エンターテインメントとして熱烈に求められるだけでなく、最近は学問的な研究対象になることも多い。本書は、BLをめぐってこれまでどんな議論が交わされてきたか、どんな先行研究があるかをまとめ、整理した入門書。今なお偏見の目を向けられることのあるこのジャンルに向き合って深く考えようとする人に、大きな刺激と励ましを与える内容だ。

 十一人の執筆者が章ごとにそれぞれの専門分野を活(い)かしたアプローチでBLをとらえている。勉強になるのと同時に読み物としてとても面白い。まだBLという呼び名もなかった五十年前、少女マンガのなかで生まれたジャンルの萌芽(ほうが)が、どのように育まれ現在に至ったか。歴史をたどる第一部は、具体的な作品名の列挙に私自身が胸のざわめくような懐かしさを覚えた。それでいて、<女であることの抑圧>から何とか逃れようと男子どうしの物語を求めた多くの女子たちが、時代とともに希望と欲望のありようを変化させていったことが俯瞰(ふかん)で見えてくるようでもある。

 女性向けの性的表現としてのBL、男性アイドル文化との関わり、ファン・コミュニティのあり方など、踏み込んで分析される。社会問題とも無関係ではいられない。ジェンダーや性差別についてはもちろん、現実のゲイ男性にとってBLはどういう存在なのかを過去の論争を検証しながら問題提起。ときに表現が暴力性を帯びることへの自覚と反省を含め、BLというジャンルを大切にしたいという真摯(しんし)な愛情が、どのページからも感じられた。

 二次創作の視点に関する考察は特に興味深い。そして執筆者の一人である岩川ありさは、マンガに限らず既存の詩歌や小説を<BL読み>で再解釈することの可能性を示す。BLは自分のなかにもある偏見を浮かびあがらせ、その先で世界の見え方を多様にしてくれる装置になるのだ。

(有斐閣・2640円)

堀 関西大ほか非常勤講師。著書『欲望のコード』。

守 関西大教授。 

◆もう1冊 

ランボー、コクトー、ジッドほか『特別な友情−フランスBL小説セレクション−』(新潮文庫)

中日新聞 東京新聞
2020年8月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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