足掛け30年! ついに完結した冒険ファンタジーの金字塔

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新フォーチュン・クエスト2(セカンド) 11

『新フォーチュン・クエスト2(セカンド) 11』

著者
深沢, 美潮
出版社
KADOKAWA
ISBN
9784049132151
価格
759円(税込)

書籍情報:openBD

足掛け30年! ついに完結した冒険ファンタジーの金字塔

[レビュアー] 夢眠ねむ(書店店主/元でんぱ組.incメンバー)

 声を大にして伝えたい。

「ついにフォーチュン・クエストが完結した!」と。

 なんと30年に及ぶシリーズが終わったのだ。作家陣に対する尊敬の意と感謝や喜びを覚えつつも読者としてはもう続きを読めないんだという寂しさがあり、1巻から読み返したりなんかしてグダグダと抵抗し、最終巻は表紙だけじっと見つめていたのだが、ついに我慢できず読了してしまった。いろんな種類の感動でぶるぶる震えた。

 まだ読者でない人にいちから説明すると、この作品は国産冒険ファンタジー物語の金字塔である。簡単に言うと駆け出しの(一癖も二癖もある愛すべき)冒険者たちがモンスターと戦い、お宝を探し絆を深めていく物語だ。私が生まれたくらいから連載が始まっていたので小学校高学年で読み始めた時には何冊も出ていたのだが、あっという間に読み尽くして追いついた。ナンバリングされた小説の新作をわくわく待つことが初めての経験だった。

 何を隠そう、私が自分をオタクであると自覚し、その後の人生にもかなり影響を及ぼした私の自分史に残る作品である。初めて自分のお金で入ったファンクラブは作者の深沢美潮先生のものだったし、ベッドサイドの小さい光で夢中で読み続けたためにかなりの視力を捧げた(これは単に自分のせい)。読書体験を人と話す機会は少ないものだが、この作品では世代を超えていろんな人と語り合った。ライトノベルを馬鹿にしてはいけない。この作品のおかげで読書家になった人がたくさんいるのだ。

 このご時世、全巻紙の本で買ってくれとは言わないが(電子書籍は合本になっていていつでも読めて便利)、どうか最後だけでも紙で読んで欲しい。

 ああ、本当に終わっちゃうんだな……としみじみしていたら、深沢先生がネット上でサイドストーリーやスピンオフの執筆を始めてくださった。まだまだこの冒険は終わらない。

新潮社 週刊新潮
2020年9月3日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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