聞いてインプットし、覚えたことをアウトプットする。「速聴勉強法」のポテンシャルとは?

レビュー

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聞いたら忘れない勉強法

『聞いたら忘れない勉強法』

著者
黒澤孟司 [著]/小松正史 [監修]
出版社
フォレスト出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784866800936
発売日
2020/07/21
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

聞いてインプットし、覚えたことをアウトプットする。「速聴勉強法」のポテンシャルとは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

聞いたら忘れない勉強法』(黒澤孟司 著、小松正史 監修、フォレスト出版)は、なかなか結果を出せずに悩んでいる社会人や学生に向け、新しい勉強法である「速聴勉強法」を提案した書籍。

病院に勤務する専門医であると同時に大学病院の教員を目指しているという著者が、医学部受験、医師国家試験を乗り越えるために開発し、現在も実践している勉強法なのだそうです。

監修者の解説によれば、それはボイスレコーダーやスマホの音声アプリを使って、記憶したい情報を自分の声で録音し、3倍速で聞き取る方法。

記憶のメカニズムである「記銘(情報を覚えること)」「保持」「想起」のサイクルが、聴覚で促進されるのです。 まず、覚えたい内容を視覚的にまとめ、その内容を自分の声でレコーディングします。自らの声帯を震わせて発声することで、理解した情報を脳に「記銘」させやすくします。 視覚に加え、聴覚や身体の運動機能を鍛えると、記憶しやすい身体に変わっていきます。 続いて、レコーディングされた声を最大3倍速で聞きます。 そのとき、脳の中で聴覚刺激が視覚刺激を引き出すため、記銘された情報が、強固に「保持」されやすくなるのです。(「記憶のメカニズムを聴覚で促進する画期的な勉強法――監修者」より)

その勉強法は何度も反復でき、しかも集中力と注意力に磨きがかかるのだとか。しかし、そもそもリスニング中心の勉強はなぜ強いのでしょうか? 基本的な考え方を知るために、 Chapter 2「リスニング中心の勉強が最強である理由」のなかから、その理由を探ってみることにしましょう。

聴覚情報のほうが視覚情報より印象に残りやすい理由

聴覚は、人間にとって大切な能力。しかし私たちは、どちらかといえば視覚に偏重した生活を送っています。それは学習面においても同じ。外国語のリスニングではどうしても聴覚を鋭敏にしなければなりませんが、漢字や単語、年号、公式などのほとんどを視覚情報に依存して覚えようとしてきたわけです。

とはいえそれは、ある意味では人間の能力を一面的にしか使いこなせていない状態。したがって、聴覚を有効に活用できるようになれば、より効率的な学習ができるということ。

本書が伝えている速聴勉強法は、まさにそれを証明しているというのです。聴覚を意識して使うことで、記憶の定着が格段に上がるという発想。

視覚偏重の勉強をしてきた人にとっては抵抗感のあることかもしれませんが、何度も教科書を黙読したり、線を引いたりしただけでその内容を理解、記憶できたかといえば、そうとも言い切れないはず。

見たものを瞬時に脳内に取り込める映像記憶のような超人的能力がない限り、読んでいるときに「理解」はできても、何度も繰り返し黙読したところで効果は見込めないということです。なぜなら穴に空いたバケツに水を入れるようなもので、それだけでは知識や情報が頭のなかにとどまることを期待することは難しいから。(59ページより)

覚えるために必要なのは「思い出す練習」

著者によれば、「覚える(記銘)」「記憶する(保持)」ことに必要なのは、「思い出す練習(想起)」。勉強する際に「覚える」「記憶する」ができたとき、それが意識したものか無意識にかかわらず、私たちは「思い出す練習」もしているというのです。

たとえば、リングのついた単語カードを利用したり、緑のマーカーで覚えたい箇所をマーキングし、それを赤い下敷きで隠しながら記憶した経験のある方は少なくないはず。そういうときにしていたことが、まさしく「思い出す練習」であるわけです。つまりは、セルフでQ&Aを行なっているということ。

自分「acceptの意味は?」

自分「えーっと、受け入れるだったかな……」

(カードをめくって)

自分「よし、正解!」

(63ページより)

カードの裏面やマーカーで隠された箇所を思い出せるのであれば、「覚えている」ということになります。でも、できないなら、それは「覚えていない」ということ。別な表現を用いるなら、インプットしたものをアウトプットできることを「覚えている」、アウトプットできないことを「覚えていない」と定義できのです。

そして、新しい知識を覚えるには、テストだったり自問自答だったり形式は違えども、この行動を繰り返すしかないと著者は主張しているのです。

Q ○○とは何か?

A △△です。

(64ページより)

いいかえれば「覚えている」という状態は、質問されたときに答えられるということ。インプットの重要性はさまざまなところで強調されていますが、勉強においてはそれをアウトプットできなければ意味がないということです。

そして、それこそが漫然と教科書を読んでも、書き込んでも覚えられない理由。

もちろん、教科書を読むだけで覚えられるという人もいるでしょう。しかし、そういう人は読みながらセルフQ&Aをしているのです。「次に書かれているのはなにか?」「たしか◯◯だったよね」と考えながら読んでいるため、記憶が定着するということ。

とはいえ、それは簡単なことではありません。そこで速聴勉強法においては、「思い出す練習」を音声とイメージの力を借りて行えるようにしているのです。(62ページより)

3倍速にすると「恥ずかしさ」がなくなる

自分の声をレコーディングし、その声を自分で聞くということに抵抗感のある人は多いはず。しかし、そんな問題も速聴勉強法で推奨されている3倍速にすると解決するそうです。

3倍速にすれば音程が上がり、自分の声だという認識ができなくなるため、特有の恥ずかしさを感じなくなるということ。つまり、「自分の声を聞くのは嫌だから……」という意識を払拭できるわけです。

なお最初から3倍速は難しいということなら、1.5倍速でも2倍速でもOK。それだけでも、恥ずかしさはかなり軽減できるそうです。そして、なれたら少しずつ速くしていけばいいのです。

聞いて理解したことは明確なイメージとして固定され、なかなか忘れにくい「視覚的印象」に変わります。 そして、何度も聞いているうちに、「聞く前に、これからしゃべる内容がスラスラ思い出されて、視覚的印象として想起される」という段階に入ります。(68ページより)

これが完璧に記憶できた状態であり、こうしたことを繰り返すだけでなんでも覚えられると著者は断言しています。(66ページより)

こうした考え方を軸として、具体的な速聴勉強法のメソッドが具体的にわかりやすく解説されています。従来の勉強法で成果を上げられず悩んでいる方にとっては、本書が大きな力になってくれるかもしれません。

Photo: 印南敦史

Source: フォレスト出版

メディアジーン lifehacker
2020年9月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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