高峰秀子の反骨 高峰秀子著

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高峰秀子の反骨

『高峰秀子の反骨』

著者
高峰秀子 [著]
出版社
河出書房新社
ISBN
9784309028804
発売日
2020/04/24
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

高峰秀子の反骨 高峰秀子著

[レビュアー] 飯間浩明(国語辞典編纂者)

 高峰秀子さんは中学の時から大好きな俳優。ところが、若者、いや、私の同世代でも知らない人がいる。ほら、「二十四の瞳」の! 「喜びも悲しみも幾歳月(いくとしつき)」の! 「カルメン故郷に帰る」「浮雲」「恍惚(こうこつ)の人」、何なら「銀座カンカン娘」も観(み)てみて。話はそれからです。

 銀幕の高峰さんは魅力的で、その演技には目を奪われるのだけど、養母とほぼふたり暮らしでの子役から始まる波瀾(はらん)の日々にも驚かされます。その半生は『わたしの渡世日記』(文春文庫)で読めます。ユーモアと批判精神に満ちた文章をじっくり味わっていただきたい。

 もっとも、彼女の自叙伝は上下巻で700ページを超えるから、まずは、今回紹介するこの本を読んではどうでしょう。過去の彼女のエッセー集などには収録されていない発言や文章を収めた一冊です。タイトルどおり、高峰さんの歯に衣(きぬ)着せぬ率直な人柄が分かります。

 本書の冒頭は、講演「私の生いたち」。演題は真面目そうですが、さすがは高峰さんで、言い回しの端々に気が利いていて、にやりとします。養母との暮らしや、俳優という仕事が好きになれなかったことなど、自叙伝と重なる部分も当然あります。一方、夫・松山善三さんとのコントのような日常描写からは、彼への深い愛情が感じられて、とてもほほえましい。

 高峰さんは衆議院の小委員会に呼ばれたこともあります。低俗化したテレビ番組への対応策を練るため、議員たちが参考意見を求めたらしいんですね。その全発言録も載っています。議員の質問はどこかトンチンカンで、彼女も真意を量りかねている部分もありますが、誰にも遠慮のないテレビ・映画批判は胸のすく思い。

 毎日の家庭生活を大切にするというのも、高峰さんの信念です。大根一本、たわし一個も妥協せず、吟味して買う。モノには執着しないけれど、いいもの見つけたら愛情込めて使う。家庭人としての彼女の一面も分かります。

 ◇たかみね・ひでこ=1924~2010年。北海道出身。女優。「流れる」など300本を超える映画に出演した。

読売新聞
2020年8月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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