なぜ人はカルトに惹かれるのか 瓜生崇著

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なぜ人はカルトに惹かれるのか

『なぜ人はカルトに惹かれるのか』

著者
瓜生 崇 [著]
出版社
法藏館
ジャンル
哲学・宗教・心理学/仏教
ISBN
9784831887795
発売日
2020/05/15
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

なぜ人はカルトに惹かれるのか 瓜生崇著

[レビュアー] 鈴木洋仁(社会学者・東洋大研究助手)

 人生経験の不足、家族関係の軋轢(あつれき)などと書名への答えは語られる。カルトに入る人は「思考を放棄した」とされる。

 そうではない、と、自らも宗教活動を12年続けたのちに抜け、今は脱会支援に携わる著者は言う。生きる意味を求め、「説明のつかない空虚感や不気味な感情」を抱いた人たちが惹(ひ)かれるのだ、と。

 本書は、生き方をじっくり観ずる機会を与えてくれる。

 評者の身内に新興宗教の信者がいる。「この教団のどこがインチキくさいか」を家族は説く。ここに盲点がある。入信する人は「正しさ」に頼りたいのに、それを得られず悩んでいる。強い信仰は疑いの裏返しであり、「外の人間」による批判は逆効果だった。

 では周りはどうすべきか。

 カルトと社会との境界線の「ゆらぎ」を認める。信者の悩みを支えつつ迷う。信じた日々もまた、かけがえのない経験と捉えられるように。

 いま悩み、苦しむ人に著者はやさしく、お手軽な解釈や解決に厳しい。誠実さの塊だ。

 宗教にかぎらず、政治や教育、企業でも、「正しさ」を求め考えるすべての人が読むべき、とてつもなく重要な本。(法蔵館、1600円)

読売新聞
2020年8月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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