アフター・ビットコイン2 仮想通貨VS.中央銀行 中島真志著

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アフター・ビットコイン2 仮想通貨vs.中央銀行

『アフター・ビットコイン2 仮想通貨vs.中央銀行』

著者
中島 真志 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784103512820
発売日
2020/06/23
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

アフター・ビットコイン2 仮想通貨VS.中央銀行 中島真志著

[レビュアー] 瀧澤弘和(経済学者・中央大教授)

 デジタル化の波が貨幣の世界を急速に覆い尽くそうとしている。仮想通貨ビットコインの中核技術であるブロックチェーンやその改良版の登場で、取引の信頼性を高めることが可能になり、さまざまな新通貨が開発されつつあるのだ。

 本書はこうした現在進行形のダイナミックな動きを、ごく最近の動向にも目配りしつつ、非常にわかりやすく解説してくれる。

 フェイスブックによる新デジタル通貨「リブラ」の発行計画、ビットコインに続いて登場した「ステーブルコイン(価格を安定させたコイン)」の数々、そしてこれらに対抗して行われている各国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)発行の動きが順を追って解説される。しかし、おそらく著者がもっとも注目しているのはCBDCの実用化が秒読み段階に入ってきていることだろう。今年から来年にかけて、カンボジア、バハマ、中国、スウェーデンなどで実用化される可能性が高い。

 われわれに身近な存在となるのは小口決済用CBDCだが、その導入にあたっては、いくつかの設計上のパラメータを決める必要がある。民間銀行を経由した間接発行か直接発行か、国民のプライバシーにどれだけ配慮するのか、金利の付加を可能にするのか等々である。

 このうちもっとも興味深く思ったのは、CBDCへのマイナス金利設定の可能性である。これは経済学でしばしば提案されてきた政策でもある。当面は銀行券と併用されることになるから、すぐには実現できないだろうが、実現すれば、消費喚起のための新たな政策手段となる。

 今日の金融システムは時間をかけて徐々に進化してきたものである。複雑なシステムをデジタルな仕組みへと大転換するのだから、生じうるさまざまな問題のチェックが必要だ。現在行われている各国の運用実験の慎重さはこのことを物語る。われわれは大きな制度変化を目前に見ているのだ。

 ◇なかじま・まさし=1958年生まれ。日本銀行などを経て麗沢大教授。著書に『アフター・ビットコイン』など。

読売新聞
2020年9月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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