戦国大名の経済学 川戸貴史著

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戦国大名の経済学

『戦国大名の経済学』

著者
川戸 貴史 [著]
出版社
講談社
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784065200155
発売日
2020/06/17
価格
1,100円(税込)

書籍情報:openBD

戦国大名の経済学 川戸貴史著

[レビュアー] 佐藤信(古代史学者・東京大名誉教授)

 戦国時代の貨幣経済を研究する著者が、戦国大名の経営を収支計算から考え、今日の価格に換算して提示している。近世では武士の家計簿や参勤交代の収支が扱われたが、本書は、史料の少ない戦国時代をお金から読み解く。

 戦国大名の領国経営をめぐり、支出では、戦争の経費として、鉄砲一挺(ちょう)が50万~60万円、兵士の装備が一式70万円、兵糧調達1000万円などの戦費を数える。平時の支出も、道路・港湾の維持管理、築城のほか、朝廷・幕府への献金まで、周到に算出する。たとえば安土城築城の総経費を100億円とみる。また15世紀末の奥州伊達氏上洛時の幕府関係者への贈答は5億円という。

 一方収入では、年貢・公事や夫役などの税のほか、鉱山開発や楽市・楽座による城下町振興に取り組んだほか、南蛮・ヨーロッパとの貿易利潤にも手を伸ばしている。

 戦国大名が、困難な経営を日々迫られる現代の企業家にも見えて、新鮮な発見がある。

 ただ、戦国大名が戦いにあたって財政の収支均衡を優先するようなことがあったのだろうか、気になる。(講談社現代新書、1000円)

読売新聞
2020年9月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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