【聞きたい。】藤田嗣隆さん 『レオナルド藤田嗣治覚書』

インタビュー

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レオナルド藤田嗣治 覚書

『レオナルド藤田嗣治 覚書』

著者
藤田嗣隆 [著]
出版社
求龍堂
ISBN
9784763020147
発売日
2020/07/22
価格
3,850円(税込)

書籍情報:openBD

【聞きたい。】藤田嗣隆さん 『レオナルド藤田嗣治覚書』

[文] 渋沢和彦


藤田嗣隆さん

■身内だからこそ書ける姿

 「フジタは他人であり研究の対象ですね。情はありますが」

 レオナール・フジタ(藤田嗣治、1886~1968年)は、乳白色の肌の裸婦像などで人気を集め、20世紀前半、パリで活躍した世界的な画家。著者は、武家の家系である藤田家9代目。フジタは祖父の弟、大叔父にあたり、なんとなく横顔が似ている。フジタは5人の妻を持ったが、子供はいなかった。本書は、生身のフジタを知る数少ない肉親の著者が、近親者から聞いた話や手記、書簡などを調べてまとめた。

 「フジタが亡くなった81歳という年齢を越えてから書き残したいという思いが強まり事実を書きました」

 江戸中期から続く藤田家の家譜などを基にルーツをたどると、4代目の妻が江戸時代の文人画家、春木南湖(なんこ)の血をひくことも分かった。「ほかに画才がある血は考えられません」

 また、フジタがモデルにした4人目の妻で日本で死去したマドレーヌについても詳述。酒や薬物におぼれ、わがままな性格などと悪く書かれてきたが、〈フジタの絵画制作上のイメージの源泉〉とし、「創造上の意欲を無限に与え続けた存在で、かけがえのないモデル。調べるとみんなに愛されていたこともわかり、誤解されていてかわいそうだった」と敬意を示す。

 戦争画を制作したため戦後は戦犯呼ばわりされ、失意のうちに日本を去った。フランスに帰化し、カトリックの洗礼を受けた。しかし、国際的な画家にもかかわらず名前の読み方もまちまち。フジタ自身が手紙などで「ツグハル」と「ツグジ」の両方を使い、公文書類もバラバラ。「身内ではツグジと呼んでいましたが、本当はレオナール・フジタがいいのでしょう」

 研究書でなく、身内だからこそ書けるリアルなフジタの姿。「今後の研究に役立ち、作品を好んでいただける人たちに読んでいただければ」(求龍堂・3500円+税)

 渋沢和彦

   ◇

【プロフィル】藤田嗣隆

 ふじた・つぐたか 昭和13年、東京生まれ。慶応大学経済学部卒。会社役員退任後、母校の文学部美学美術史学科に学士入学し平成18年に卒業。現在もフジタ研究を続けている。

産経新聞
2020年9月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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