納豆は本当に日本だけの国民食なのか? 辺境冒険家が語るアフリカの納豆世界

インタビュー

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幻のアフリカ納豆を追え!

『幻のアフリカ納豆を追え!』

著者
高野 秀行 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103400721
発売日
2020/08/27
価格
2,090円(税込)

書籍情報:openBD

4年ぶり納豆探求紀行「幻のアフリカ納豆を追え!」発刊 「大豆とは何なのかというところに話が逆流していきます」

[文] 月刊ソイフードジャーナル


「納豆」とは何なのか?

ノンフィクション作家・高野秀行氏がアジア辺境を訪れ、現地独特の納豆の存在を紹介した著書『謎のアジア納豆』。その発刊から4年が経ち、2020年8月、同氏の最新作『幻のアフリカ納豆を追え!』が発刊された。今度のテーマも「納豆」、そして舞台は「アフリカ」へ。

同著では、アフリカなどの取材ルポを通じて「納豆とは何か」という根源的なテーマへと導かれている。今回の著書について、日本で唯一の「大豆」業界専門誌「月刊ソイフードジャーナル」が高野秀行氏本人に話を聞いた。

 ***

――前作「謎のアジア納豆」を発刊した時の反響はどうでしたか?

 とにかく驚かれました。納豆は日本独自の食べ物だというのが(世間の常識として)あったので。海外にもある事に純粋に驚かれました。

――納豆業界からの反響は?

 3年ほど前に全国納豆協同組合連合会(=納豆連)の同友会で講演者として呼んでいただきました。懇親会でたくさん質問して頂いたことを今でも覚えています。7年前に何も分からず納豆連に聞きに行った私がその4年後に講演するなんて想像もしませんでした(笑)。


ノンフィクション作家・高野秀行氏

――前作から4年、今回はその続編?

 当初は前作の続編という形で始めました。アフリカと朝鮮半島はまだだったので、道半ばという感じで。しかし、進めていくうちに、思ったより深いものがあって、前作を上回る感じになってしまいました。

 こんな大変なことになるとは正直思わなかった。発酵学、人類学など調べる量・範囲が広くて、今までの著書の中でも一番大変でした。

――前作と今作合わせて2部作完結?

 そうですね、これで本当に完結です。でも、単に前作の続編という訳でもなくて。前作を読んでいなくても全然構わないし、それを超越するような内容になっているのではないかと自分では思っています。

――どんなところを読んでもらいたいですか?

 そうですね。「月刊ソイフードジャーナル」の読者の方は大豆加工食品関係者ということですが、アフリカの納豆は大豆ではないんです。大豆に見ためも中身も似ているパルキアという豆から作られているという所が面白いと思います。

 日本では納豆は大豆で造るものということがあまりにも当たり前過ぎて疑問を抱かない。アフリカに行くと、別に大豆でなくてもいいのではと初めて思い至る。私自身、実際にいろんな豆で納豆を造って試してみたのですが、それぞれ美味しいのです。じゃあ何で大豆だけで造るのかという疑問が生まれて、じゃあ大豆とは何なのかというところに話が逆流していく。その辺が醍醐味かなと思います。


アフリカで見つけた納豆 写真:高野秀行

――今作の最終章で「サピエンス納豆」という言葉が登場しますが…

 今回の取材の結果、驚くべき結論に達しました。納豆どころか大豆の概念が変わると思います。

――ちなみに高野さんは日本で納豆をどのように食べますか?

 よくやるのはナスのチーズ焼きですね。ナスを炒めてから納豆を乗せてトロけるチーズをかけてオーブンかグリルで焼きます。簡単だし美味しいです。

――7年もの間、海外の納豆を見てきて納豆の食べ方が変わったとか?

 とにかく納豆にうるさくなりましたね(笑)。豆の味とか、発酵の具合とか。毎年家族旅行で東北や北陸にキャンプに行くのですが、行くと必ずしているのは、地元の納豆を買って地元の日本酒と一緒に食べて飲む。これが本当に最高ですね。

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 同書は、ナイジェリア、セネガルなどの西アフリカ諸国に赴き、その現地の納豆を探すルポで構成されており、各地域独特の納豆が発見される様子が描かれている。高野氏曰く「アジアでは家庭で納豆を作るのが主流だが、アフリカでは買って食べるのが主流」「西アフリカは世界最大の納豆消費地」、また「アフリカの納豆は元々大豆ではなく、バオバブの種やパルキア豆など様々な豆や種子から作られ、近年大豆でも作られるようになった」という。「納豆は日本独自の食べ物で、ネバネバで、ご飯と食べるもの」そんな固定概念がまた木っ端微塵に打ち砕かれ、納豆の概念が何十倍、何百倍にも広がっていくようだ。
 
 アフリカだけでなく、朝鮮半島の納豆についても現地ルポがあり、それらを踏まえて、日本、アジア大陸、アフリカの納豆の食べ比べ検証、名付けて「第1回納豆菌ワールドカップ」の試みの様子も記されている。業界関係者にとってとても興味が湧く試みだ。

 エピローグでは、「なぜアジアでは大豆で納豆を作るのか?」という、アフリカの納豆を知る同氏ならではの疑問が記されている。そこには、人類の歴史や文化に関わる壮大な仮説が示されている。とても興味深い。

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高野秀行(たかの・ひでゆき)
ノンフィクション作家。1966(昭和41)年、東京都生れ。早稲田大学卒。1989(平成元)年、同大探検部における活動を記した『幻獣ムべンべを追え』でデビュー。2006年『ワセダ三畳青春記』で酒飲み書店員大賞を受賞。2013年『謎の独立国家ソマリランド』で講談社ノンフィクション賞を、2014年同作で梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞する。『アヘン王国潜入記』『西南シルクロードは密林に消える』『イスラム飲酒紀行』『移民の宴』『謎のアジア納豆』『辺境メシ』などの著書がある。

月刊ソイフードジャーナル
2020年9月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

フードジャーナル社

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