<東北の本棚>消えゆく秘め事の空間

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遊廓

『遊廓』

著者
渡辺 豪 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
芸術・生活/写真・工芸
ISBN
9784106022944
発売日
2020/06/29
価格
2,200円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>消えゆく秘め事の空間

[レビュアー] 河北新報

 かつて日本には、公然と売春を営む街、遊郭が存在した。その紛れもない事実を、福島県郡山市出身の著者が、10年かけて写真に収めた労作だ。北海道から沖縄まで、遊郭跡約500カ所を訪ね歩いて撮影した中から、東北の14カ所を含む140カ所を厳選した。
 戦後の娼家(しょうか)は、玄関や外壁にモザイクタイルを敷き詰め、彩りを添えた。色の使い方やデザインが印象的だ。秘め事の空間と外界をつなぐ窓は多種多様で、窓枠の形状や木の使い方など一つ一つ繊細な細工が施され、その意匠に目を奪われる。
 中には、朽ち果てた娼家の姿も。1958年施行の売春防止法によって、遊郭は事実上消滅した。半世紀以上たち、人々の生きざまが凝縮した空間が消えつつあることを思い知る。
 著者は、遊郭を専門とする出版社「カストリ出版」や書店「カストリ書房」を経営する。(郁)

 新潮社03(3266)5111=2200円。

河北新報
2020年9月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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