『遊廓』
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<東北の本棚>消えゆく秘め事の空間
[レビュアー] 河北新報
かつて日本には、公然と売春を営む街、遊郭が存在した。その紛れもない事実を、福島県郡山市出身の著者が、10年かけて写真に収めた労作だ。北海道から沖縄まで、遊郭跡約500カ所を訪ね歩いて撮影した中から、東北の14カ所を含む140カ所を厳選した。
戦後の娼家(しょうか)は、玄関や外壁にモザイクタイルを敷き詰め、彩りを添えた。色の使い方やデザインが印象的だ。秘め事の空間と外界をつなぐ窓は多種多様で、窓枠の形状や木の使い方など一つ一つ繊細な細工が施され、その意匠に目を奪われる。
中には、朽ち果てた娼家の姿も。1958年施行の売春防止法によって、遊郭は事実上消滅した。半世紀以上たち、人々の生きざまが凝縮した空間が消えつつあることを思い知る。
著者は、遊郭を専門とする出版社「カストリ出版」や書店「カストリ書房」を経営する。(郁)
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新潮社03(3266)5111=2200円。