『自由主義の危機』
- 著者
- 船橋 洋一 [著、編集]/G・ジョン・アイケンベリー [著、編集]
- 出版社
- 東洋経済新報社
- ジャンル
- 社会科学/政治-含む国防軍事
- ISBN
- 9784492444580
- 発売日
- 2020/08/07
- 価格
- 3,300円(税込)
書籍情報:openBD
『日米同盟を考える』
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自由主義の危機 船橋洋一+G・ジョン・アイケンベリー編著 東洋経済新報社/日米同盟を考える 浅海保著 作品社
[レビュアー] 篠田英朗(国際政治学者・東京外国語大教授)
『自由主義の危機――国際秩序と日本』の表紙には、印象的な写真が用いられている。厳しい表情で対峙(たいじ)するアメリカのトランプ大統領とドイツのメルケル首相の間で、腕組みをした日本の安倍首相がじっと話を聞いている。現代世界で日本に期待されている役割を象徴していると考えられ、有名になった写真だ。
自由主義は危機に瀕(ひん)している。アメリカの力の低下と、欧州諸国との関係悪化により、自由主義陣営の結束が、国際的に揺らいでいる。そのため、東アジアの自由主義陣営の要である日本の価値規範外交への期待が高いのだ。
だが、超大国・中国の躍進を目にして、国力を減退させて自信喪失気味になっている日本の国民は、なかなか客観的に自分の立ち位置を確認できないかもしれない。もしそうなら、日米の12人の研究者が現代国際社会における日本の役割を論じあう『自由主義の危機』は、大いに役に立つ書物だろう。
『日米同盟を考える』は、ジャーナリストとして半世紀にわたって日米両国を観察し続けてきた著者が、あらためて日米同盟とは何かを問い直す書だ。様々な興味深いエピソードが惜しげもなく披露され、数多くの政治家や言論人の言葉が引用される。その豊饒(ほうじょう)さは、そのまま60年の歴史を刻む日米同盟の深さの反映だろう。
だが豊富な経験と深い知識を持つ著者であっても、日米同盟が今後どう発展していくのかについては、断定的な立場をとれない。日米同盟は、それくらいに不思議な要素を持ちながら、ダイナミックに展開している。
一つはっきりしているのは、日米同盟の運命は、自由主義の国際秩序の命運によって、大きく左右されるということだ。日本に期待されている役割は何か。二つの書物を通じて、思索は深まる。
◇ふなばし・よういち=元朝日新聞社主筆 ◇G.John Ikenberry=米プリンストン大教授 ◇あさみ・たもつ=元読売新聞グループ副主筆。