地図とグラフで見る第2次世界大戦 V・ベルナール+N・オーバン著

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地図とグラフで見る第2次世界大戦

『地図とグラフで見る第2次世界大戦』

著者
ヴァンサン・ベルナール [著]/ニコラ・オーバン [著]/ジャン・ロペズ [監修]/太田佐絵子 [訳]
出版社
原書房
ISBN
9784562057580
発売日
2020/05/23
価格
8,800円(税込)

書籍情報:openBD

地図とグラフで見る第2次世界大戦 V・ベルナール+N・オーバン著

[レビュアー] 三中信宏(進化生物学者)

 第2次世界大戦では、国境を超え大陸をまたいで大量の戦闘員と兵器が行き来し、戦火が広がれば国を支える経済活動や民間人の生命そのものにも甚大な被害がもたらされた。この大戦にともなう政治・経済・軍事にわたる大変動を記録した大量のデータが現存している。しかし、この巨大かつ複雑な数字のデータはそのままでは容易に理解できるしろものではない。そこで登場するのが新たなデータ・デザインを駆使したインフォグラフィックスである。

 まな板のような大判の本書を開くと、どのページにもフルカラーで描かれたみごとな図版が目に飛び込んでくる。データの可視化の技法を駆使したマップとダイアグラムの数々は膨大なデータを踏まえた労作ぞろいだ。しかも、これだけ大きなサイズにもかかわらず、どの図版も細かいところまで配慮が行き届いている。

 各国の当時の軍事力を客観的に評価し、所有する戦闘機・軍艦・兵器の性能の詳細きわまりない比較は“ミリオタ”ではない評者にもぐいぐい迫る説得力がある。とりわけ、太平洋戦争のきっかけとなった真珠湾攻撃、独ソ絶滅戦争を象徴するスターリングラード包囲戦、広島と長崎に災厄をもたらしたマンハッタン計画、そして連合国軍によるノルマンディー上陸作戦など第2次世界大戦の要となったできごとの多面的な図解は本書の見どころだ。また、大戦後の世界復興がどのような国際協調と対立のもとでなされたのかについても触れている。

 本書は図版集ではあるのだが、さらりと通読できるタイプの本ではない。各図版があまりにも多くの情報をギュッと詰め込んでいるので、ひとつずつ“解凍”しながらゆっくり味わうにはきっと時間がかかるだろう。誇張ではなく拡大鏡を片手に、このインフォグラフィックスの作品をじっくり楽しむことをおすすめする。データ・デザイナーが担うべき仕事の領分はこれからますます広がりそうな予感がする。太田佐絵子訳。

 ◇Vincent Bernard=ジャーナリスト、軍事史の専門家 ◇Nicolas Aubin=第2次世界大戦史の専門家。

 ※原題は Infographie de la Seconde Guerre mondiale

読売新聞
2020年9月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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