榊晃弘写真集「九州・沖縄の巨樹」

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九州・沖縄の巨樹

『九州・沖縄の巨樹』

著者
榊 晃弘 [著]
出版社
花乱社
ジャンル
芸術・生活/写真・工芸
ISBN
9784910038186
発売日
2020/07/20
価格
4,400円(税込)

書籍情報:openBD

榊晃弘写真集「九州・沖縄の巨樹」

[レビュアー] 尾崎真理子(早稲田大学教授/読売新聞調査研究本部客員研究員)

 温暖な九州・沖縄は巨樹、中でも常緑高木、クスの宝庫だ。写真は熊本市藤崎台の球場に沿って並ぶクス群の1本で、樹齢は推定1000年。高さ25メートル、幹周りは8メートル近くもあるのに、八方に細くたおやかに枝垂れ、無数の葉のさざめきが聞こえそう。強さと繊細、老いと若さを備える姿に魅了される。

 長崎市の山王神社に立つ、被爆して枯れながら甦(よみがえ)ったクスも忘れ難い。スダジイ、スギ、イチョウ、ケヤキ、ヒガンザクラ、イチイ……。福岡市在住の80代半ばの写真家は、100本の名木を訪ね歩き、仰ぎ拝むように撮っている。大きさと共に、副題の「遙(はる)かなるいのちの旅」の意も迫る。どの木も根付いた時からその地で不動だが、それぞれ過酷な時間を旅してきたのだ。

 いったい何百回の大嵐に耐え、今日も青葉がそよぐのだろう。力を抜いて、地に重みを預けて。歴戦の将とは、なるほどこんな風情か。(花乱社、4000円)

読売新聞
2020年9月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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