仕事に熱くなりすぎない。健全に働くために大切なポイントは?

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のびのび働く技術

『のびのび働く技術』

著者
リズ・フォスリエン [著]/モリー・ウェスト・ダフィー [著]/石垣 賀子 [訳]
出版社
早川書房
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784152099594
発売日
2020/08/05
価格
2,310円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

仕事に熱くなりすぎない。健全に働くために大切なポイントは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

仕事の現場においては、さまざまな感情に左右されてしまうことが少なくありません。

ある意味では当たり前のことでもありますが、そうした感情が仕事に影響し、パフォーマンスが下がってしまうのだとしたら考えもの。

そこで参考にしたいのが、『のびのび働く技術』(リズ・フォスリエン&モリー・ウェスト・ダフィー 著、石垣賀子 訳、早川書房)です。

マーケティングとデザインを専門とするコンサルタントと、デザインファームIDEOにおける組織デザイナーとの共著。

「プロフェッショナルとしてふさわしい態度を維持しつつ、仕事の現場でわいてくる感情を受け入れ、偽りのない充実した自分でいるための手引き」なのだそうです。

仕事に感情を持ちこむと絶対にうまくいかない。多くの人がそう言われてきたのではないでしょうか。この本は、そんな伝説を覆したいという思いで書きました。

混乱を招くことなく、仕事に感情を持ちこむことは可能です。ただし、タイミング、背景、伝えかた、いずれも重要です。

上司がストレスやいらいらを抱えているのがわかるときは、ミーティングを入れないようにする。

難しい対話をしているときは、落ち着いて気持ちを伝え、声を荒げたり非難のまなざしを向けたりしない。

うれしいコメントや楽しくなるメッセージをまとめてとっておいて、うまくいかないときの心のよりどころにする。

いずれも日々のワークライフをより快適に送るための策であり、どれも感情の扱いかたにまつわる工夫です。

感情にオープンに向き合えたときに、成功(金銭面の利益だけでは計れない、真の意味での成功)はやってきます。(「おわりに」より)

そんな考え方に基づく本書のなかから、きょうは第2章「心身を健全に保つため、仕事と適度な距離をおく」に注目してみたいと思います。

気にしすぎるのをやめる

次にあげた5つの項目のうち、いくつ心当たりがあるだろうかと著者は問いかけています。

・仕事のメールを10分以上チェックしないでいると気になる

・「最近どうしてた?」と友人にきかれると、仕事上のちょっとした困っている件について細部まで話しはじめる

・そのちょっとした困っている件が夢に出てくる

・夕食のとき、ジムで運動しているとき、寝る前などにも仕事のことが気になってしまう

・仕事がうまく行っているかどうかで気分がほぼ決まる

(29ページより)

「けっこう当てはまる」という人は、とりあえず仕事から少し離れてみたほうがよさそう。

仕事のことをくよくよ考えすぎたところでいい影響はなく、健全でもないからです。

気にしすぎると、たいしたことのない問題が大ごとに思えてしまったり、誰かがなにげなく口にしたひとことにショックを受けてしまったりすることになります。

とはいえ現実問題として、仕事の内容やポジションを問わず、仕事が頭のなかの大部分を占めてしまう人はいるもの。それは仕方のないことでもあるでしょう。

そこで著者は、仕事における感情の扱い方のひとつとして、「仕事に熱くなりすぎない」ことを提案しています。

気にしすぎるのをやめると、いろんな苦悩が消えることになります。

重要なポイントは、「仕事に熱くなりすぎない」ということは「仕事はどうでもよい」という意味ではないこと。もっと自分を大事にする、という意味だといいます。(29ページより)

だとすれば、仕事を離れる時間をつくることが必要となるはず。では、どうすればいいのでしょうか? その問いに対する答えとして、著者はいくつかの方法を紹介しています。

休暇をとる

長めの休暇をとれば、心と体の健康を守ることができ、生産性も維持できます。

ポイントは、休み中に職場の人と連絡しないように割り切ること。1日メールで連絡がつかなくなると考えただけで罪悪感に駆られるようでは、心から休暇を楽しむことなどできないわけです。

特に、職場で部下を持つ人が休みをどうとるかは、かなり重要。上の立場にいる人が休みをとることに積極的になれば、その下にいる人たちももっと休暇を活用できるようになるはずだからです。(36ページより)

平日夜、仕事から離れる日をつくる

仕事のある平日に楽しい時間をつくるのは、休みをとるのと同じように大切。

しかも、ちゃんとした休暇をとるより実行しやすくもあります。

ボストン・コンサルティング・グループは「プレディクタブル・タイムオフ(PTO)」と名づけた制度を取り入れ、チームのメンバー六人が平日夜に一日ずつ完全に仕事から離れる日を設けました。

すると社員の満足度は増し、気持ちにゆとりができて、離職率も下がったそうです。また、仲間が心身とも気持ちよく働けているかを意識するようにもなりました。

コンサルタントの一人はこう述べています。「仕事に打ち込んでいても、お互いを気にかけて、疲れて燃え尽きてしまっていないか目を配っています」(37ページより)

夜まで仕事を持ち込まない日をつくると、睡眠を補うことも可能になります。

しっかり寝ていないとミスや事故が増えますし、睡眠不足だと気持ちも沈み、不安になってしまいがち。

長い間寝ていない状態の人は、他人の友好的な表情を敵対的とみなす傾向があるという実験結果もあるのだそうです。(36ページより)

集中できる日を1日開けておく

著者の場合、週に1日はミーティングも電話会議もプライベートで人と会う予定も入れない日を確保しているのだとか。

途中になっている仕事もこの日に進められるため、他の日にそこまで追い詰められずにすむわけです。

丸1日開けておくのが難しければ、何時間かだけでも確保し、やりたい仕事に集中できるようにしてみるべき。(38ページより)

ちょっとした休憩を入れる余裕をもつ

ほんの5分デスクを離れるだけでも緊張がほぐれ、そのあとまたがんばることができるもの。

デンマークで行われた実験では、試験の前に短い休憩を入れた学生のほうが、ひと息つく時間を一切与えられなかった学生より高いスコアをとっていることがわかったといいます。(38ページより)

仕事に臨むとき、自分の感情にうまく耳を傾け、その意味するところをきちんと理解し、上手に感情を表現して、充実した気持ちで働けるようになることを著者は読者に望んでいるそうです。

穏やかな気持ちで本書と向き合い、参考にしてみれば、そういう状態になることは不可能ではないと思います。

Source: 早川書房

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2020年9月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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