『かしこくて勇気ある子ども』
書籍情報:openBD
山本美希著「かしこくて勇気ある子ども」
[レビュアー] 橋本倫史(ノンフィクションライター)
「この子 どんな子になると思う?」
あなたの子どもが生まれてくるとして、こう尋ねられたら、なんと答えるだろう。本作に登場する夫の答えは「かしこくて勇気ある子ども」だった。
夫婦が夢を膨らませていたある日、マララ・ユスフザイが銃撃されたと報じられる。パキスタンに生まれた彼女は、女性が教育を受ける権利を主張し、イスラム武装勢力に銃撃されてしまう。この実際に起きた出来事に、漫画に登場する妻は動揺する。マララは、「かしこくて勇気ある子ども」だったせいで銃撃されたのではないか、と。
世界では連日のように痛ましい出来事が起きている。悪意や暴力が存在するこんな世界で、子どもは傷つかずに生きていけるだろうかと、妻は自問自答する。その苦悩が、言葉だけでなく、巧みなコマ割りと描写で表現される。女性の姿を描いてきた著者による、渾身(こんしん)の一作。(リイド社、1800円)