仕事の質を上げ、生産性を向上させる「数字」と「目的」の関係とは?

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

無駄な仕事が全部消える超効率ハック

『無駄な仕事が全部消える超効率ハック』

著者
羽田康祐 k_bird [著]
出版社
フォレスト出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784866800981
発売日
2020/09/24
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

仕事の質を上げ、生産性を向上させる「数字」と「目的」の関係とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

日本人には「努力することはいいこと」と考える傾向があるため、真面目であればあるほど「自分にはがんばりが足りない」「あるだけに時間を使ってでも、ちゃんとした仕事をしよう」と考えてしまいがち。

もちろん、それ自体は悪いことではないでしょう。しかしその一方では生産性の向上や働き方改革が叫ばれてもいます。

「うまくいかなかった」のは、「努力が足りなかったからだ」「時間を使えば、なんとかなる」では乗り切れなくなってしまったわけです。

では、どうすればいいのか?

いま、多くのビジネスパーソンに求められているのは、「努力をすること」以上に「努力をしなくてすむ工夫」です。

2020年の新型コロナ騒動により、多くの企業でリモートワークが広がりましたが、これを機会に自分の頭の中にあるスイッチを「仕事の量」から「仕事の質」へと転換しなければならないのです。「まえがき」より)

無駄な仕事が全部消える超効率ハック――最小限の力で最大の成果を生み出す57のスイッチ』(羽田 康祐 k_bird 著、フォレスト出版)の著者は、こう主張しています。

外資系コンサルティングファームと広告代理店でキャリアを積んできたという人物。前者では合理的に物事を進める方法を、後者ではプランナーやクリエイターなど、多様な人材とプロジェクトを進める方法を学んできたのだそうです。

そうした経験に基づき、本書では双方から得た学びを凝縮した「超効率ハック」をテーマ別に紹介しています。

きょうは「思考」についてのハックを紹介した第7章「『思考』の生産性を上げる」のなかから、「数字」と「目的」との関係に焦点を当ててみたいと思います。

数字の先にある目的を見て、新たな選択をする

常に数字に追い立てられているような環境のなかにいると、「数字を追いかけていたつもりが、いつの間にか数字に振り回されていた」という本末転倒な状況となってしまったりするもの。

そんなときには、「自分はなんのために数字を追いかけているのか?」という「目的」の再確認をすべきだと著者はいいます。

「数字」は目に見えますが、「目的」は見えるものではありません。そのため、目に見える「数字」のほうについ振り回されてしまうわけです。

とはいえ数字とは、「目的」に向かううえでの「達成水準」でしかなく、目的があって初めて意味を持つものでもあります。

では、目的を明確にするとどのような「いいこと」があるのでしょうか? この問いに対して、著者は2つのメリットを挙げています。(246ページより)

メリット1:目的は、仕事に意義を与えてくれる

ここで著者は、イソップ寓話の「レンガ職人」という話を引き合いに出しています。

レンガ職人に「1日100個レンガを積み上げてくれ(数字)とお願いしたとしても、「なぜ100個のレンガを積み上げなければいけないのか?」という目的がわからなければ、レンガ職人は意欲が湧かないかもしれないわけです。

しかし「多くの困っている人を救う大聖堂をつくる」という「目的」を示し、「だから1日100個レンガを積み上げて欲しい(数字)」と頼んだら、レンガ職人の受け止め方は変わるはず。

レンガを100個も積み上げるのは単調で気が遠くなる作業かもしれないけれども、「大聖堂をつくる」という目的が明らかになれば、単調な仕事も「意義のある仕事」に変わっていくということです。

そして、この考え方は、現代の仕事のあり方にも置き換えることが可能。

今後もリモートワーク化が進んでいけば、個人作業がさらに増えていくことになるでしょう。また、そんな時代だからこそ、目的を問い続けることの重要性が増してくるはず。

なぜなら「目的なき数字」は、レンガ職人の例のように仕事を単調にし、やりがいを失わせ、仕事を「数字を追いかけるだけの孤独な作業」に変えてしまう可能性があるから。

だからこそ、もしも数字に振り回されているのなら、ひとつひとつの数字に対して「その数字を追いかける目的はなにか?」を問い続け、レンガ職人にとっての大聖堂に相当するものを自分のなかに秘めておくべきだということです。 (247ページより)

メリット2:目的は、煮詰まったときに別の選択肢を与えてくれる

もし自分が営業担当者だったとしたら、上司から「新規顧客へのテレアポ電話を、1日100件から200件に増やせ」と言われたら追い詰められてしまうはず。

朝から深夜まで電話をかけ続けるような、ブラック労働になりかねません。

しかし、「1日200件電話する」という数字だけに目を奪われるのではなく、数字の先にある「目的」に目を向けてみるとどうでしょうか?

その場合、真の目的は「売上を上げること」。逆にいえば、目的さえ達成できれば、「1日200件電話する」ことが手段でなくてもいいかもしれないわけです。

実はこの話、筆者が社会人1年目に経験した実話です。

筆者は当時「1日200件の電話は流石に無理だ」と思ったので、自分でつくった企画書を200件に郵送することにしました。いわゆるダイレクトメールです。

その結果、筆者の業務量は「郵送した後、問い合わせの電話を待っているだけ」なので激減し、売上はテレアポのときよりもはるかに上がりました。当時の上司が大変喜んだのを覚えています。(249〜250ページより)

このエピソードからわかることがあります。それは数字が、「1日200件の電話」のように、手段の選択肢を狭めてしまう場合があるということ。

もちろん、その手段でうまくいっているうちはいいかもしれません。しかし、いったん煮詰まってうまくいかなくなると、「成果が出ない手段をひたすら続ける」という悪循環に陥ってしまう可能性があるのです。

でも「数字」ではなく「数字の先にある目的」に目を向けることができれば、結果的に「別の選択肢を見出す」ことが可能。そのため、「数字に縛られた状態」や「数字に振り回された状態」から解放されるということです。

他にも「時間」「段取り」「コミュニケーション」「資料作成」「会議」「学び」「発想」とテーマは多種多様。それぞれが簡潔にまとめられていることもあり、とても使い勝手のよい内容だと思います。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2020年10月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク