『卓球王水谷隼終わりなき戦略』
書籍情報:openBD
卓球王 水谷隼 終わりなき戦略 水谷隼著
[レビュアー] 稲野和利(ふるさと財団理事長)
2016年リオ五輪卓球男子シングルス銅メダル・男子団体銀メダルに輝いた日本卓球界の第一人者水谷隼の手になる「卓球戦略論」。純粋技術論以外は誰にでも読める。
「対人競技の究極形態」(著者)とされる卓球において、用具の開発とも相俟(あいま)った技術革新やその反対側での競技の趣向を損なわないためのルールメイキングは、近年の動きを特徴づける。つまり、変化が激しい。著者は時代の変化に適応して世界のトップを維持してきたが、本書を読めばそれは必然であったことが分かる。「日本人が好む謙虚な言動を持たない」(本書「まえがきに代えて」)と評される著者の書きぶりは直截(ちょくせつ)的かつ挑戦的で、誤解をも恐れぬ信念を感じる。と同時に回り道をせずに本質を突く論理力と説得力に引き込まれる。
若手選手におけるハングリー精神不足という指摘や厳しい環境を求めての海外進出の勧めなど数々の挑戦的言辞はいったいどう受け止められているのであろうか。張本智和や伊藤美誠といった一流選手評も興味深い。
プロフェッショナルの矜持(きょうじ)が強く伝わってくる1冊だ。(卓球王国、1700円)