女たちの本能寺 楠戸義昭著

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女たちの本能寺

『女たちの本能寺』

著者
楠戸 義昭 [著]
出版社
祥伝社
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784396116101
発売日
2020/09/01
価格
946円(税込)

書籍情報:openBD

女たちの本能寺 楠戸義昭著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

 本書に登場する女性たちは七人。濃姫といえば、ドラマや映画でも有名な織田信長の正妻だ。彼女は本当に本能寺で長刀(なぎなた)をふるい、夫と共に討ち死にしたのか。お市の方は、信長の美貌(びぼう)の妹であったが故に波乱の人生をおくった人。細川ガラシャはキリスト教に帰依したことで有名だが、この人がなぜ強い信仰という心の支えを必要としたのかといえば、三日天下で謀反人の烙印(らくいん)を押された明智光秀の娘だったからである。時代は下がって徳川家三代将軍家光の乳母・春日局(かすがのつぼね)も、歴史上のポジションとしては勝ち組だが、実は光秀の縁者であり、父・斎藤利三は光秀の重臣で本能寺の変でもキーマンだった。彼女の戦闘的な生涯からは、血筋に潜む敗者の悲劇を一代で逆転させてやろうという執念が感じ取れる。

 この四人ほど名を知られていないけれど、光秀の正妻煕子の良妻賢母ぶりと壮絶な最期、信長に深く愛され、その没後は秀吉に運命を歪(ゆが)められてしまった側室お鍋の方、光秀の妹で、信長に重用された美しき才媛・御妻木(おつまき)のミラクルで謎多き実像と、それぞれに新鮮な驚きがある。(祥伝社新書、860円)

読売新聞
2020年9月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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