映画も仰天の生い立ち 依存症克服の“先駆者”はポジションを守れるか?

レビュー

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生き直す 私は一人ではない

『生き直す 私は一人ではない』

著者
高知東生 [著]
出版社
青志社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784865901078
発売日
2020/09/07
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

映画も仰天の生い立ち 依存症克服の“先駆者”はポジションを守れるか?

[レビュアー] 今井舞(コラムニスト)

 薬物所持で逮捕され、先月で執行猶予が明けた著者。

 物心ついたとき既に父母はおらず、祖母だけが頼りだった幼少時代。突然現れた母に引き取られるも、大物侠客の愛人であった母との暮らしは、抗争に巻き込まれ日本刀で襲われるなど、およそ普通の家庭とはかけ離れたもの。17歳の時、その母も自殺で亡くなる。更には実の父は別の侠客であったことも知らされて。いやいやいや。東映もびっくりの実録任侠路線な生育環境がつまびらかに。やがて上京、ホストを経てAVプロダクションを経営。知り合いの嶋大輔のツテで28歳で遅咲きの俳優デビュー。後に高島礼子と結婚。だが俳優業の傍ら始めたエステ等の経営に行き詰まり、ストレスで若い女性と薬物にのめり込むように。逮捕されたのは「薬物・愛人・ラブホテル」のスリーカードが揃った現場であった。

 妻も仕事も何もかも失ったどん底の著者を救ったのは、依存症に造詣が深い医師と、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」の代表女性。特にこの女性の、尻込みする著者を依存症克服活動に引き込んでいく、大胆でユーモラスな手法はかなりのエンターテインメント。以前この欄で紹介した清原和博の本も、この手のプログラムの重要性について触れているが、本書では更に詳しく、どんなカリキュラムが組まれ、依存症を克服する上でなぜそれが必要なのかが具体的に体験談として綴られている。同じ年に逮捕された清原や元アナウンサーらと通称「花の二〇一六年組」を結成、講演会に登壇するなど、現在も積極的に啓蒙活動を行っている著者。回復者による「リカバリーカルチャー」の担い手としても注目され、ネット配信作品で俳優復帰も果たしたという。

 今や依存症克服のランドマーク的存在として認知されつつある著者であるが。その立ち位置を脅かしそうな人物が「依存界」に降臨した。伊勢谷友介だ。

 社会貢献活動の経験豊富、弁も立ち講演などもお手の物。復帰のワンチャンを狙うヤマっ気と、それより何より華がある。何だかかなり分が悪そうな。負けるな高知東生! 心配してるの私だけかもしれないが。

新潮社 週刊新潮
2020年10月15日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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