デイヴィッド・ロス著/「世界の工場廃墟図鑑」

レビュー

8
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世界の工場廃墟図鑑:環境問題と産業遺産

『世界の工場廃墟図鑑:環境問題と産業遺産』

著者
デイヴィッド・ロス [著]/岡本千晶 [訳]
出版社
原書房
ISBN
9784562057719
発売日
2020/06/25
価格
5,500円(税込)

書籍情報:openBD

デイヴィッド・ロス著/「世界の工場廃墟図鑑」

[レビュアー] 通崎睦美(木琴奏者)

 画面いっぱい、大量に屹立(きつりつ)するカスピ海の石油掘削装置は、アゼルバイジャン・バクーに遺(のこ)されたかつての油田拠点。ハンガリー・ブダペストで1914年に操業した発電所の制御室は、宇宙戦艦ヤマトの操縦室を思わせる。世界各地、かつて栄えた、多岐に亘(わた)る産業の名残を捉える写真は、どれも圧巻だ。

 1974年に閉山した長崎県の軍艦島が、現在観光地化しているのは知られるところ。本書でも忘れられた廃墟(はいきょ)と共に、カナダ・トロントにあるドン・ヴァレーの煉瓦(れんが)工場など、産業博物館として活用される施設が紹介される。写真はチェコ共和国、ドルニ・ヴィトコヴィツェの製鉄所内部。巨大なガスタンクはコンサートホールとなっているそうだ。一昔前まで熱気に溢(あふ)れていた工場が廃墟となり、その佇(たたず)まいはまるで中世の教会や名画のように胸を打つ。不思議な体験だ。岡本千晶訳。

読売新聞
2020年10月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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