Pebbles Books「私はやどかりになりたい。背負ったものをさっぱり捨てたい。」【書店員レビュー】

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「私はやどかりになりたい。背負ったものをさっぱり捨てたい。」

[レビュアー] Pebbles Books(書店員)

人生の大波の数々をくぐり抜けた49歳の女性は、家族からひとり離れて島に滞在し、浜辺の閑静な暮らしの中で湧き上がる思索を、波に洗われる美しい貝になぞらえて書き残しました。

彼女は、大西洋横断飛行を成し遂げた冒険家チャールズ・リンドバーグの妻。自身も飛行士として夫と世界を飛び回り、6人の子どもを育て上げ、1人を不可解な事件で亡くし、第二次大戦後は罹災民救済活動に身を捧げたその人生は、様々な毀誉褒貶もあり穏やかなものではありませんでした。

しかし、ひとり浜辺に佇む日々の中でさざ波に洗い流されるように、彼女は妻、母、社会活動家という殻を一つ一つ脱ぎ捨てて、ひとりの女性としてシンプルで凛とした生き方へと意識を拓きます。

その飾らない言葉に、文学者吉田健一が読みやすく美しい訳文を与えた名エッセイです。

トーハン e-hon
2020年4月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

トーハン

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