そこには幅広い可能性が。1週間で習得できる「KPIマネジメント」の基本とは?

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そこには幅広い可能性が。1週間で習得できる「KPIマネジメント」の基本とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

最高の結果を出すKPI実践ノート』(中尾隆一郎 著、フォレスト出版)の著者は、2019年に『最高の結果を出すKPIマネジメント』を刊行し、ベストセラー実績を生み出した人物。

KPIの本質がわかりやすく解説されていたこともあり、反響も大きかったのだとか。

1年間で30回ほどの企業、組織からKPIに関しての講演やKPI作成支援の依頼もいただきました。業種も規模もさまざまです。

IT、教育、旅行、流通、物流、人材ビジネス、化学メーカー、広告代理店、エンターテイメント、設備器機メーカー、サービス業、税理士の団体、公認会計士の団体、中小企業の支援団体、新聞系イベント、市役所などです。

規模もさまざまで、一部上場企業から従業員100名以下の企業までありました。支援の対象も、会社全体の話もあれば、特定の事業や新規事業の立ち上げなどいろいろでした。(「はじめに」より)

つまりはそれほど、KPIには幅広い可能性があるということなのでしょう。本書はその流れをくむ新刊。

いまからKPIマネジメントをスタートする、あるいは改善したい企業、個人を対象に、より実践的な内容に仕上げたのだそうです。

とはいえ前著を読んでいない方は、「KPIとはどのようなものなのか?」という疑問を解消できないままの状態にあるかもしれません。

そこできょうは、KPIマネジメントの定義がまとめられたDAY0「KPIマネジメントの勘どころ」に焦点を当て、基本的なことを確認してみたいと思います。

KPIとはなんですか?

「KPIとはなにか」と問われ、「売り上げや利益のこと」「数字で管理すること」「事業を数字で見ること」などと答える方も少なくないはず。

ところが著者によれば、これらはすべて不正解なのだそうです。

KPIはKey Performance Indicatorの3つの頭文字をとったものです。そして、Key PerformanceとIndicatorの2つに分けると意味が分かりやすくなります。

Key Performanceは「事業成功の鍵」。そしてIndicatorは「数値」あるいは「数値目標」です。

つまり、KPIは「事業成功の鍵」の「数値目標」のこと。

「事業成功の鍵」は何なのかを明確にして、それを「数値目標」として設定するものがKPIです。(6ページより)

ちなみに、この「事業成功の鍵」はCSF(Critical Success Factor)と呼ぶのだとか。

KFS(Key Factor for Success)、KSF(Key Success Factor)とも呼ばれますが、意味は同じ(本書ではCSFと呼ばれています)。

重要な主役は4つ

KPIマネジメントを実行する際、KPIとCSFに加えて重要なのがGoalとKGI。

Goalは、いうまでもなく「事業のゴール」。そしてKGIは、Key Goal Indicatorの3つの頭文字をとったもの。つまり、「事業のゴールの数値目標」だということ。

一般的には、期末や3年後に「利益○億円」というような目標設定がされているはずで、すなわちこの「利益」にあたる部分がGoal、「○億円」がKGIにあたるわけです。

すなわち「Goal」「KGI」と、「CSF」「KPI」という2組、合計4つの主役(Main Character)がいるということになるのです。

事業の最終ゴールの数値目標であるKGIを達成するための成功の鍵がCSFで、それを数値目標にしたものがKPIだという関係。

つまりKPI目標を達成していれば、最終的にKGI(最終的な目標数値)も達成するということになるわけです。逆にKPI目標が未達成であれば、そのままではKGIも未達成になります。

KPIマネジメントとは、KPI数値からKGI(最終的な目標数値)の見込みを予想し、対策を講じることです。KPI数値がよい時は問題ありません。しかし、KPI数値が悪ければ、対策を講じる必要があります。そのためには、KPIはKGIの「先行指標」である必要があります。(8ページより)

たとえば1年後の期末時点の利益がKGIである場合、期初数カ月目のKPI数値で、期末時点の利益が予想できるとします。

そのようにKGIの状況が早くわかればわかるほど、必要な対策に当てる時間を多く確保できるわけです。(7ページより)

KPIは「信号」なので「1つ」ではなければならない

著者はよく、KPIマネジメントを交差点の信号にたとえるそうです。

自動車を運転していて交差点に差しかかったら、信号を確認し、進むか停車するかを判断することになります。

赤信号なら停止、青信号なら進めばよいわけですが、青信号はKPIがよい状況。赤信号は悪い状況で、黄信号はよくない兆しだということ。

KPIの数値は、信号と同じように事前に察知しておく必要があるということです。(8ページより)

いちばん弱い箇所を強化するのがKPIマネジメント

KPIマネジメントは、「制約条件理論」に基づいて実施するもの。すなわち、そのビジネス活動の最も弱い箇所に着目し、そこを強化するという考え方だということです。

その弱い箇所が強くなれば、次に弱いところを強化。そうやって順々に弱い箇所をなくしていけば、結果的にビジネス全体が強くなるわけです。

その時に一番弱い箇所こそが「CSF(事業成功の鍵)」なのです。

著者いわく、交差点の信号のすごいところは、運転手も歩行者もすべての人がルールを知っていること。それは、KPIマネジメントについても同じだといいます。

KPIを経営者だけ、あるいは経営企画メンバーだけが活用するのでは、その効能の一部しか使えていないことになります。

そうでなく、すべての従業員がKPIを意識して定期的にチェックし、もしもKPIが悪化したら、いち早く対策を検討し、行動する。それが大切だということです。(8ページより)

以後の章では、KPIマネジメントの体制や進め方、ケーススタディを盛り込んだマネジメント事例集などが網羅されています。

最初のDAY1から順番に読んでいけば、自社、自組織のKPIマネジメントがスタートできるような実践的な構成になっているのも魅力。

各章を1日ずつ読み進めれば、1週間で習得できるつくりになっているので、「時間をかけずにKPIを取り入れたい」という方には最適です。活用してみる価値は、十分にありそうです。

Source: フォレスト出版

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2020年10月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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