探検ジャーナリストがアフリカと韓国に納豆を追う

レビュー

8
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幻のアフリカ納豆を追え!

『幻のアフリカ納豆を追え!』

著者
高野 秀行 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103400721
発売日
2020/08/27
価格
2,090円(税込)

書籍情報:openBD

探検ジャーナリストがアフリカと韓国に納豆を追う

[レビュアー] 都築響一(編集者)

 まだまだ気楽な旅行ができないご時世だからこそ、濃厚な旅行記が読みたくなる。高野秀行さんはいま、新刊がもっとも待ち遠しい探検ジャーナリストで、今回はアフリカと韓国に納豆を追う!探検の記録。前著『謎のアジア納豆』に続く第2弾だ。

 探検、というとかつては「ひとがなかなか行けないところに行く」ことだったが、そういう場所はいまの世界にもう、ほとんどない。いま探検とは、「ひとが気にも留めないことを世界の果てまで追いかける」ことではないかと思うが、納豆もそうした「なんでまた!?」と突っ込みたくなるテーマだろう。

「納豆、大好きです!」という外国人がいると、日本人はオーと驚きながらも微妙な表情になったりする。それは高野さんが出会ってきた納豆世界の民――韓国、中国南部から東南アジア内陸部、ヒマラヤに至る南アジア、ナイジェリアやセネガルなど西アフリカ――に共通する感覚だそう。その納豆=自国に特有の食材という意識を、高野さんは「手前味噌ならぬ手前納豆」と表現する。調査の過程で、文献資料がなかなか見つからないことを嘆いているが、珍しさのかけらもない、あまりにもふつうの日常食への視線。そういうプロが手をつけない領域に飛び込んでいくのが、在野の探検者の役割でもある。

 納豆キライ! というひともいるだろうが、本書は納豆を足がかりにした旅行記なので、読者は高野さんと一緒にアフリカで砂埃にまみれたり、真冬の韓国で熱々の納豆汁にほっこりしているうちに、いろんなところに連れて行ってもらえる。そして、その堅すぎず柔らかすぎずの文章がなにより魅力的。石鍋で供されるチョングッチャン(韓国の納豆汁)を、「『おまえ、俺のことを知ってるか!?』と言わんばかりにグツグツと激しく煮え立っていた」なんて書けるひとの本が、おもしろくないわけあるだろうか!

新潮社 週刊新潮
2020年10月22日菊見月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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