緊張したらメモしよう。愛想を振りまかずに仕事ができる人になる方法

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緊張したらメモしよう。愛想を振りまかずに仕事ができる人になる方法

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「自分は、コミュニケーション能力が低いのではないか?」というような悩みを抱えている方は、決して少なくないはず。

しかし『コミュ力なんていらない 人間関係がラクになる空気を読まない仕事術』(石倉秀明 著、マガジンハウス)の著者は、「コミュ力がないからといって、決して仕事ができないわけではない」と断言しています。

リクルート、リブセンス、DeNAを経て、現在は株式会社キャスター取締役COOとして活躍する人物。同社は、700名以上の従業員全員がリモートワークで働く会社としても有名です。

そんな実績を生み出しているにもかかわらず、もともと「コミュ障」と言われるくらいコミュニケーション能力の低い人間だったのだとか。

それなのに、渡り歩いてきた上記の企業での営業成績は常にトップクラスだったというのですから不思議な気もします。

それを実現できていたのは、自分が苦手な方法で勝負をしないことを心がけて、勝てるパターンを習得していたからです。そうしたティップス(コツやテクニック)をこの本では紹介していきます。(「はじめに」より)

ただし、「人見知りを克服して、コミュニケーション上手になろう」というような趣旨のものではないといいます。

ここで伝えようとしているのは、「苦手なことでも考え方や捉え方を変えたり、技術でカバーできる方法がある」ということ。

そんな本書のなかから、きょうはPART 4「『コミュ障』でも、人間関係がラクになる考え方」に焦点を当ててみたいと思います。

人がわかり合えることは奇跡だと考える

他者とのコミュニケーションがつらいと感じる人の多くは、「どうして自分のことをわかってくれないんだろう」、あるいは「どうしてみんなと同じように相手の気持ちを察することができないんだろう」「なぜ自分は空気が読めないんだろう」など、常に“わかり合えること”を前提に考えている気がする。

著者はそう指摘しています。

そればかりか、他人と自分を比較して「あの人はできているのに自分はできない」と思い込んでしまうため、どんどん自信がなくなっていくという悪循環に陥ってしまうわけです。

しかし実際には、コミュニケーションが得意そうに見える人であっても、相手と認識を揃えることができていなかったり、わかり合えなかったりすることがあるもの。

たとえば数人のチームがあり、上司から「これ、やっといて」と言われたとしたら、各メンバーがそれぞれなにかを感じ取り、行動に移すはずです。

でも、この「これ、やっといて」という言葉には、さまざまなニュアンスが含まれていて、さまざまな仕事のフローを想定しないといけません。

「お客さんに対してこうやってスケジュールを伝えなきゃいけない」とか「それよりも先に社内調整をしたほうがいいな」とか、「資料を提出して待機している間に別のタスクに取り組んだほうが効率よさそう」とか、このお客さんはキーマンだから先に連絡しておくべきだな」とか。

メンバーそれぞれに思考するものは異なります。

でも、それを包括して「これ、やっといて」という言葉だけで仕事が成立するには、前提としてチーム全員が同じ粒度で認識できている必要があります。(114〜115ページより)

この場合の上司のように、コミュニケーションを簡略化しがちな人の根底にあるのは、「できればなにも言わずに理解してほしい」という思い。つまり、わかり合えることが前提になっているわけです。

とはいえ「わかり合える」とは、ある程度のコミュニケーションの積み重ねがないと成立しないものでもあります。

そう考えれば、すぐにわかり合えないのは当たり前。そこで、まずはそれが普通であるという認識を持つべきだということです。(114ページより)

正面ではなく、横に並ぶ

「人の目を見て話しなさい」とよく言われます。しかし著者は、人の目を見ながら話すことができないのだそうです。相手の目を見るのはもちろん、相手から目を見られても緊張してしまうから。

たしかに相手の正面にいると、仕草や感情の機微が目に入るものです。つまりはそうした情報が雑音になって、話に集中できなくなるということ。

だから、腰を据えて会話をするとき、僕はできるだけ正面ではなく、横に座るように意識しています。そうしたほうがリラックスして会話ができるし、相手の話にも集中しやすい。(123ページより)

もちろん、1on1の面談や面接のように、対面にならないといけない場面もあるでしょう。しかし、そういうときでも、必ずしも目線をしっかり合わせる必要はないと思っているのだとか。

そうした場合は、明らかに挙動不審にならない程度に、少し下を見たり横を見たりしながら話をしているというのです。

相手の目をしっかり見続けることよりも、「相手の言いたいことを理解する」「自分が相手に伝えたいことを伝える」、このふたつを成立させることに意識を集中させることのほうが大切だという発想。これは、誰にでも応用できそうなことではあります。(123ページより)

無理に愛想よくしなくてもいい

「社会人なんだから、愛想がよくないとダメだ」というようなことを言われた経験は、誰にでもあるはず。

ところが、自分が愛想よく振る舞えないからこそ、著者は愛想のいい人を前にすると「自分が相手からどう見えるかに意識が向いてしまっていて、話を集中して聞いているようには思えない」と感じてしまうのだそうです。

もちろん、愛想がいいに越したことはありません。しかしコミュニケーションが苦手な人が愛想よくすることに意識を向けすぎると、会話に集中できなくなってしまうというのです。

話を聞いている時間は、相手の言ってることを理解することに徹する必要があるし、自分が伝えたいことをわかりやすく伝えるための準備をする必要もあります。

特に、僕のような共感力のない人間が器用にいろんなことを考えようとしても、できないものはできないんですよね。

完璧な人間など世の中には存在しないのですから、肩肘はらず、心配しすぎないほうがいいのではないでしょうか。(126ページより)

では、コミュニケーションを取ろうとするときに緊張してしまい、表情がこわばってしまうような人はどうすればいいのでしょうか?

そういう人が緊張を和らげ、「話を聞いているな」と相手に思ってもらえるコツは、「メモをとる」こと

メモをとるときは下を向いていても不自然ではなく、相手の話を書き出せば理解しやすくもなり、気持ちに余裕が生まれやすくなるもの。

そうすることで緊張が和らげば、多少は愛想よく柔らかい表情になることも多いというわけです。(125ページより)

自身にコミュ力がないという自覚があるからこそ、著者は本書を通じ、同じように“コミュ力不足”からくる人間関係の難しさに悩んでいたり、仕事が思うように行かなくて途方に暮れている人の助けになれればいいと考えているそうです。

「自分のことだ」と感じた方は、手にとってみてはいかがでしょうか?

Source: マガジンハウス

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2020年10月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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