<東北の本棚>震災10年 山々鮮やかに
[レビュアー] 河北新報
東北の山々の四季を鮮やかに写し取った。日本山岳写真協会員木村忠尚さん(59)=相模原市=の作品64点を紹介する。東日本大震災から間もなく10年。復興の願いを込めた東北賛歌が聞こえてくるようだ。
みずみずしい秋田駒ケ岳(仙北市)のお花畑、燃えるような焼石岳(奥州市)の紅葉と、母なる大地の美しさに息をのむ。雪の八甲田山(青森市)は厳しい父のよう。夕日であかね色に染まる月山弥陀ケ原(鶴岡市)は神々の世界を感じさせる。
構成は震災と東京電力福島第1原発事故を意識した。残雪が美しい福島市の吾妻山鎌沼の「胎動」に始まり、福島県北塩原村の秋元湖を鳥が渡る「飛翔(ひしょう)-明日に向かって」で締めくくる。著者は2014、15年の2年間、転勤で福島市に赴任。その時に撮影した作品で、今も風評被害に苦しむ福島への思いがにじむ。(会)
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リーブル出版088(837)1250=2970円。