景観からよむ日本の歴史 金田章裕著

レビュー

7
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景観からよむ日本の歴史

『景観からよむ日本の歴史』

著者
金田章裕 [著]
出版社
岩波書店
ISBN
9784004318385
発売日
2020/07/18
価格
880円(税込)

書籍情報:openBD

景観からよむ日本の歴史 金田章裕著

[レビュアー] 佐藤信(古代史学者・東京大名誉教授)

 景観から地域の歴史をさぐる景観史の入門書。著者は、伝統的建造物群や文化的景観にも詳しい歴史地理学者。

 地域の景観を構成する多くの景観要素の実態と変遷を探り、各要素が全体の景観構造を有機的に形成する文脈を明らかにする方法をとる。たとえば京都は、古代中世以来の寺社、近代の町家・商店やビルなどの複雑な要素の集合体が古都とされる。こうした景観分析は興味深い。

 古地図・古文書・写真、現地の地理的痕跡や発掘成果などの資料を手がかりとし、人々の営みが作った景観から、地域社会の歴史を具体的に復元している。

 復元対象は、京都のほか、古代の条里開発、中世の荘園開発、近世の城下町形成や新田開発など時代を超え、地域も全国にわたる。そして各々(おのおの)の景観検討が詳細な調査・研究を背景としているところに、説得力がある。

 景観史の豊かな研究成果が、世界文化遺産など歴史的景観への注目とともに、多くの人々に共有されることを期待したい。また、歴史地理学を学ぶ若手研究者の減少に歯止めがかかるとありがたい。(岩波新書、800円)

読売新聞
2020年10月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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